- 問 2・9・10・11 の 4 分野が 19 回とも同じ問番号に固定されていることと、形式比率・小問数の違い
- 本文の根拠を 25〜40 字の記述に落とす型(理由・目的・対策・支障で変わる文末)
- 登場人物と部門の関係図を、CBT のメモ機能で行テキストとして書く手順
- EVM の 6 指標・クリティカルパス・稼働率・損益分岐点という計算の型
- 当日 5 分で 4 問を決めるフローと、1 問 30 分を上限にする時間配分
- 本書 25 章の総復習ロードマップと、直前 1 週間・当日の運び
科目 B は 11 問出題・5 問解答、150 分・100 点満点で基準点 60 点です。問 1(情報セキュリティ)が必須で、残り 4 問を問 2〜11 から選びます。本章が扱う 4 分野は直近 10 年 19 回とも問 2・9・10・11 に固定で、いずれも小問の 57.7〜72.6% が字数記述です。60 点は 20 点の問題 3 問を完答した分ですが、実際には 5 問すべてで 12 点ずつ積むほうが易しく、どの 1 問も 0 点にしないことが到達条件になります。
1. 4 分野の性格 ― 何が同じで何が違うか
科目 B の問番号と分野の対応は、直近 10 年 19 回で 1 度も入れ替わっていません。経営戦略・情報戦略は問 2、プロジェクトマネジメントは問 9、サービスマネジメントは問 10、システム監査は問 11 です。つまり選ぶ分野は当日ではなく学習開始時に決められます。本章の 4 分野は、コードも構成図の読解も要求されない代わりに、本文の根拠を短い日本語に言い換える作業がすべてになります。
| 問 | 分野 | 題材の型 | 小問数(1 問平均) | 字数記述 | 計算 | 前提となる知識章 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2 | 経営戦略・情報戦略 | 経営課題とフレームワーク | 138(7.3) | 62% | 4%(19 回中 5 回) | 第 18・19・21 章 |
| 9 | プロジェクトマネジメント | 計画・契約・見積り・リスク | 130(6.8) | 57.7% | 10.0%(19 回中 9 回) | 第 15 章 |
| 10 | サービスマネジメント | 運用・SLA・インシデント | 124 枝(6.5) | 6 割強 | 19 回中 5 回 | 第 16 章 |
| 11 | システム監査 | 業務プロセスと承認フロー | 146(7.7) | 72.6% | 0% | 第 17 章 |
4 分野のうち最も書く量が多いのはシステム監査です。1 問あたり 7.7 小問は 11 分野で最多で、しかも計算が 1 本もありません。逆に最も計算が混ざるのはプロジェクトマネジメントで、19 回中 9 回に 1〜2 問入ります。図 25-1 は形式の内訳を横に並べたものです。
難易度は採点講評の「全体正答率」で比べます。19 回分を数えると、システム監査は「平均」11 回で最も安定し、サービスマネジメントは「低」5 回・「やや低」4 回と荒れます。ただしサービスマネジメントの「低」は平成 31 年春までに集中し、令和 3 年秋以降は「平均」中心です。
| 問・分野 | 高 | やや高 | 平均 | やや低 | 低 | 明記なし |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 問 2 経営戦略・情報戦略 | 2 | 2 | 8 | 1 | 3 | 3 |
| 問 9 プロジェクトマネジメント | 2 | 0 | 10 | 1 | 4 | 2 |
| 問 10 サービスマネジメント | 0 | 0 | 8 | 4 | 5 | 2 |
| 問 11 システム監査 | 3 | 0 | 11 | 1 | 2 | 2 |
向いているのは、長い本文から因果を拾って短く言い換えられる人、契約や運用の語彙に抵抗がない人、業務プロセスを日本語で追える人です。逆に不向きなのは、用語を名前でしか覚えていない人と、設問の主体・観点を読み分けずに書き始める人です。本文が長く読解に時間がかかるのが 4 分野共通の弱点で、特に問 11 は本文 3〜4 ページに表が 2〜3 個付きます。読む速度が足りないと、書ける内容でも時間切れになります。
2. 記述解答の型 ― 本文の根拠を 25〜40 字に落とす
この 4 分野が「国語問題」と呼ばれるのは、答えの材料が本文の中にしかないからです。知識はどの語で言い換えるかを決めるために使い、内容そのものは本文から取ります。手順は 4 分野で共通です。
- 冒頭 1〜2 段落で、業種・何が問題になっているか・誰が対応を指示されたかを押さえる。ここが全設問の主体の既定値になる
- 設問を先に全部読む。小問ごとに「形式・字数・『本文中の字句を用いて』の有無・問われ方(理由/目的/効果/施策/条件)」をメモする
- 登場人物と部門の関係をメモに起こす(図 25-2)。誰と誰の間に契約・SLA・承認があるかを線にする
- 本文を見出し単位で読み、下線・空欄に当たったらその場で答えを作る。読み返しは 1 回までにする
- 記号選択と用語記述を先に確定して部分点を押さえ、長い字数記述を最後に回す
手順 3 の関係図は、書いた瞬間に主体の取り違えが消えるので費用対効果が最も高い作業です。図 25-2 は 4 段階で組み立てる手順を示します。
問われ方が変われば文末も変わります。表の「文末の型」に合わせるだけで、内容が合っているのに減点される事故が減ります。
| 問われ方 | 文末の型 | 入れる要素 | 解答の形 |
|---|---|---|---|
| 理由は何か/なぜか | 〜から/〜ため | 事実+結果 | その機能は供給者の提供範囲外であるから |
| 目的は何か/狙いは何か | 〜ため | 行為+効果 | 優先度の高い作業を期間内に終わらせるため |
| どのような効果があるか | 〜できる/〜しなくなる | 変化 | バッファを不必要に消費しなくなる |
| 何をすべきか/対応策は | 〜を〜する | 対象+動作 | 切り戻しを考慮した展開計画を作成する |
| 条件は何か | 〜であること | 状態 | テスト環境の容量と能力が稼働環境と同等であること |
| どのような支障が出るか | 〜が〜できない | 主体+できないこと | 複数の担当者が同時に更新できない |
| 監査手続を述べよ | 〜を閲覧し、〜を確かめる | 資料名+技法+確認内容 | 権限申請書と権限マスタとを照合して確かめる |
| 戦略を述べよ(クロス SWOT) | 〜を見込み、〜を応用して〜する | 機会+強み+施策 | 在宅需要の拡大を見込み、既存の配送網を応用して新サービスを始める |
文末が決まったら、次は要素の数です。字数は要素数の指示だと考えます。図 25-3 のように、本文から拾った 2 つの根拠を因果でつないで 1 文にすると、25〜35 字にちょうど収まります。
最後に、この 4 分野で最も配点効率の高い原則が「本文中の字句を用いて」です。指定がある小問は言い換えずに本文の名詞をそのまま使います。特にシステム監査は、指定がなくても資料名・管理表名を本文表記のまま入れるのが得点源で、自分の言葉に直した瞬間に「資料名でなくデータ名を書いた」誤答に変わります。逆に指定がない経営戦略やプロジェクトマネジメントでは、本文の語をつなぎ変えて設問の観点に答える必要があり、丸写しは「説明になっていない」と減点されます。
3. 計算の型 ― 出れば必ず取る 4 系統
この 4 分野は計算が少数派です。それでも捨てないのは、型を知っていれば 3 分で確実に得点でき、知らなければ手が出ないという、部分点の効かない小問だからです。出る計算は下表の範囲を出ません。
| 分野 | 計算の型 | 式 | 出題実績 |
|---|---|---|---|
| 問 9 | EVM の指標 | SPI = EV ÷ PV、CPI = EV ÷ AC、EAC = BAC ÷ CPI | 令和元年秋(式は問題文で与えられた) |
| 問 9 | クリティカルパスと余裕日数 | 前進計算で最早、後退計算で最遅、差が余裕日数 | 平成 31 年春、令和 7 年春 |
| 問 9 | 期待値(デシジョンツリー) | 金額 × 発生確率を分岐ごとに合計して比較 | 平成 30 年春、令和 4 年秋 |
| 問 9 | 工数の再見積り | 件数 × 1 件当たり工数 | 令和 2 年 10 月 |
| 問 10 | 稼働率 | (提供時間 − 停止時間) ÷ 提供時間 | 計算があったのは 5 回。令和 3 年春以降ほぼ毎回 |
| 問 10 | 停止許容時間 | 提供時間 × (1 − 目標稼働率) | 同上 |
| 問 10 | 要員工数 | 件数 × 1 件当たり時間。増加率と余裕率は掛け算で重ねる。480 分 = 1 人日 | 令和 6 年秋、令和 4 年秋 |
| 問 2 | 変動費率と累積利益の増加率 | 変動費率 = 変動費 ÷ 売上高 | 令和 4 年秋(解答例 e = 40、f = 80) |
| 問 2 | 回収期間 | 投資額 ÷ 年間キャッシュフロー(=税引後利益 + 減価償却費) | 令和元年秋 |
| 問 2 | ROE | 当期純利益 ÷ 自己資本 | 平成 29 年春、令和 5 年秋 |
| 問 2 | 現金の増減 | 営業 CF + 投資 CF + 財務 CF | 平成 29 年秋 |
| 問 11 | 計算は出ない | 数値は日付・期限・頻度の比較か、承認の閾値の材料 | 19 回で 0 本 |
計算の型: EVM の 6 指標と EAC
PV(Planned Value: 計画価値)、EV(Earned Value: 出来高)、AC(Actual Cost: 実績コスト)の 3 つから、SV = EV − PV、CV = EV − AC、SPI = EV ÷ PV、CPI = EV ÷ AC を求めます。完成時総予算 BAC(Budget At Completion)を使って EAC = BAC ÷ CPI が完成時総コストの見積りです。
例題: BAC 2,000 万円のプロジェクトで、ある時点の PV が 800 万円、EV が 700 万円、AC が 875 万円だった。SPI・CPI・EAC を求めよ。
- SPI = 700 ÷ 800 = 0.875。1 を下回るので進捗は計画より遅れている
- CPI = 700 ÷ 875 = 0.8。1 を下回るのでコストは計画より超過している
- EAC = 2,000 ÷ 0.8 = 2,500 万円。このままの効率なら 500 万円超過する
SPI と CPI はどちらも EV が分子です。分母が計画なら進捗、実績ならコストと覚えます。
計算の型: 稼働率と停止許容時間
稼働率 = (提供時間 − 停止時間) ÷ 提供時間、停止許容時間 = 提供時間 × (1 − 目標稼働率)。
例題: サービス提供時間が 200 時間の期間に障害で 3 時間停止した。目標稼働率が 99.5% のとき、実績の稼働率と、目標を満たす停止時間の上限を求めよ。
- 稼働率 = (200 − 3) ÷ 200 = 0.985、すなわち 98.5%
- 停止許容時間 = 200 × (1 − 0.995) = 1 時間
- 実績の停止 3 時間は許容 1 時間を超えるので、SLA の目標を満たしていない
計画停止を提供時間に含めるかは本文の定義に従います。同じく、サービス回復時間に「利用者が復旧を確認するまで」を含めるかどうかも本文で指定されます。この 2 点を確認せずに式へ入れるのが最頻の失点です。
計算の型: 経営戦略の財務 3 型
変動費率 = 変動費 ÷ 売上高、損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ (1 − 変動費率)、回収期間 = 投資額 ÷ 年間キャッシュフロー、年間キャッシュフロー = 税引後利益 + 減価償却費。
- 令和 4 年秋 問 2 は財務計画表から変動費率を求めさせました。4 年目までの売上高合計 300・変動費合計 150 なら率は 50% で、累積損失を 0 にするため変動費を 120 に抑えると 120 ÷ 300 = 40% です
- 固定費 6,000 万円・変動費率 0.6 なら、損益分岐点売上高 = 6,000 ÷ (1 − 0.6) = 15,000 万円
- 投資 12,000 万円、税引後利益 2,000 万円、減価償却費 1,000 万円なら、年間キャッシュフローは 3,000 万円で回収期間は 4 年
- 減価償却費は現金の支出を伴わないので、利益に足し戻す。ここを忘れると回収期間が長く出る
クリティカルパスは第 15 章のアローダイアグラムがそのまま使えます。前進計算で最早結合時刻、後退計算で最遅結合時刻を求め、両者が一致する経路がクリティカルパス、差がフロート(余裕日数)です。科目 B では「どの作業を何日短縮すれば全体が何日縮むか」まで聞かれるので、短縮してもクリティカルパスが別の経路に移る点に注意します。
4. 経営戦略・情報戦略(問 2)
19 回すべて問 2 に固定で、必須の問 1 の直後に置かれる選択問題の先頭です。試験要綱 Ver.5.6 の別紙では「経営戦略」「情報戦略」「戦略立案・コンサルティング技法」の 3 行がこの 1 枠を共有しますが、実際の主軸は経営戦略(環境分析・成長戦略・マーケティング・財務)で、IT 戦略が主題になったのは令和 3 年春の 1 問だけです。DX や IT 活用が論点に含まれた回は 6 問あります。
| 回 | 題材 | 主要論点 |
|---|---|---|
| 平成 28 年春 | 大規模地震に備える BCP 策定 | BIA/RTO/他社連携/PDCA |
| 平成 28 年秋 | コンビニのマーケティング戦略 | 4P/STP |
| 平成 29 年春 | 外食チェーンの BSC 戦略マップ | ROE 分解/BSC 4 視点 |
| 平成 29 年秋 | 電子部品会社の経営戦略 | 5F/SWOT/CF 計算/IRR |
| 平成 30 年春 | スーパーの中期事業戦略 | クロス SWOT/ポジショニング/AISAS |
| 平成 30 年秋 | 洋食レストランの経営改善 | 特性要因図/ABC 曲線/範囲の経済 |
| 平成 31 年春 | 保養所を活用した観光ホテル事業 | 5F の脅威/参入障壁/感情的価値 |
| 令和元年秋 | スマートフォン会社の成長戦略 | 成長マトリクス/回収期間法 |
| 令和 2 年 10 月 | IT 企業の新事業創出戦略 | PEST/バリューチェーン/ブランド |
| 令和 3 年春 | 機械部品メーカの IT 戦略策定 | バリューチェーン/ERP/ETL/SFA |
| 令和 3 年秋 | 食品会社の売上拡大策 | 3C/STP/5A/パブリシティ |
| 令和 4 年春 | ゲーム理論による事業戦略策定 | マクシミン/ナッシュ均衡/OEM |
| 令和 4 年秋 | 教育 SaaS の新規事業開発 | SWOT/PoC/BMC/損益分岐点 |
| 令和 5 年春 | ブルーオーシャン戦略の策定 | 戦略キャンバス/IoT 保守 |
| 令和 5 年秋 | BSC による中期経営計画 | BSC の CSF・KPI/SECI/ROE |
| 令和 6 年春 | 物流業の 3PL 化の事業計画 | PEST と 5F の視点差/3PL |
| 令和 6 年秋 | コーヒーチェーンの成長戦略 | サービスプロフィットチェーン/LTV |
| 令和 7 年春 | 化学品メーカの多角化戦略 | アンゾフ/クロス SWOT/M&A |
| 令和 7 年秋 | スポーツウェアメーカの事業領域拡大 | VRIO/ドメイン再定義/規模の経済 |
題材は 4 系統に分かれます。小売・外食・サービスの B2C 成長が 7 問、製造業の環境分析と事業領域の再定義が 6 問、B2B サービス・新事業・IT 戦略が 5 問、事業継続が 1 問です。冒頭は「収益が頭打ちの会社で、経営陣が室長に戦略策定を指示する」型でほぼ固定され、〔見出し〕付きの節が 3〜4 つ続いて各節が大設問 1 つに対応します。節の切れ目が設問の切れ目だと分かっていれば、読みながら解けます。
形式は小問 138 個・1 問あたり 6〜8 個(平均 7.3)で、字数記述 62%・記号選択 28%・計算 4%・用語記述 3% です。字数は 15 字以下の短答が 44%、25〜45 字の説明型が 45% と二極化します。40 字級は令和 3 年秋などに集中し、令和 6 年秋以降は令和 7 年秋の 45 字 1 個を除いて 35 字以下です。頻出論点は SWOT とクロス SWOT が 8 問で突出し、DX 系の IT 用語 6 問、規模の経済・範囲の経済 5 問、提携・M&A・OEM 5 問、法令や社会要請 5 問、損益分岐点と固定費・変動費構造 4 問と続きます。前提知識は第 18 章(経営戦略)・第 19 章(技術戦略とビジネスインダストリ)・第 21 章(企業活動と会計)です。
- 表題と冒頭段落(1 分): 業種・何が頭打ちか・戦略策定を命じられた人物と部署をマークする
- 設問を全部先読み(3 分): 大設問と〔見出し〕の対応を書き込み、形式・字数・語尾をメモする
- 本文を〔見出し〕単位で読む(10 分): 箇条書きには機会・脅威・強み・弱みの記号を振り、「しかし」「一方」「ただし」の直後と「〜のために」「〜によって」の因果に印を付ける
- 記号選択と短答(5 分): 分析の階層(マクロは PEST、業界は 5F、自社はバリューチェーンと VRIO、統合は SWOT)と対概念(外部と内部、機能的と感情的、規模と範囲、固定費と変動費)を確定してから選ぶ
- 字数記述(8 分): クロス SWOT なら「〔機会〕を見込み、〔強み〕を応用して〜する」の型に入れる
- 最終確認(2 分): 設問の主体・観点と一致しているか、文末が問い方に対応しているかを見る
| 失点パターン | 何が起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| 用語を名前でしか覚えていない | STP・成長マトリクス・SECI・ABC 曲線が何のための道具か答えられない | 用語は「どの階層の分析か」とセットで覚える |
| 設問の主体・観点を外す | 顧客の課題を問われて自社の課題を、財務の妥当性を問われて競争戦略を書く | 設問の主語と観点を書き写してから解答を作る |
| 因果を一段先まで書かない | 「直接契約する」で止まり、仕入単価の低減に触れない | 手段を書いたら「それで何が良くなるか」を必ず足す |
| 2 要素の片方しか書かない | 外部環境と内部環境の組合せのうち片方だけを書く | 35 字以上の枠は 2 要素の指示と読む |
| 財務・計算の基礎不足 | CF 計算書の 3 区分、減価償却の非現金性、固定費は売上減でも減らないことを外す | 第 21 章の計算の型を 4 つだけ回して当日に臨む |
向いているのは、長文から因果を拾って短く言い換えられる人、営業や企画の業務経験がある社会人、ROE や損益分岐点に触れたことがある人です。19 問中 5 問に財務計算が混ざるので、計算を完全に避けたい人には向きません。令和 4 年春以降の 8 回は正答率が「平均」から 1 段階の幅に収まっており、安定した得点源にしやすい分野です。
5. プロジェクトマネジメント(問 9)
19 回とも問 9 に固定です。役職者が計画を作り、リーダの報告を受けて判断するという構図がほぼ全回に共通し、業種は製造業 8 回・小売と流通 5 回・金融 2 回です。平成 31 年春を境に、題材がパッケージ導入からアジャイル・新規事業へ交代しました。
| 回 | 題材 | 主要論点 |
|---|---|---|
| 平成 28 年春 | システムの品質評価 | 工程別品質判定基準/なぜなぜ分析/QCD 調整 |
| 平成 28 年秋 | 料金システムのパッケージ導入 | フィット&ギャップ分析/アドオン見積り/RFP と評価表/偽装請負 |
| 平成 29 年春 | CTI システムの移行判定会議 | 出席者の選定/テスト環境の同等性/緊急時対応 |
| 平成 29 年秋 | ERP のベンダ選定 | ステコミとの認識ギャップ/RFI と RFP/評価表の改善 |
| 平成 30 年春 | ERP 導入のリスクマネジメント | デルファイ法/2 種類の予備/期待値/二次リスク |
| 平成 30 年秋 | ERP 導入計画のリスク管理 | プロジェクト憲章/プロトタイピング/データ移行 |
| 平成 31 年春 | システム更改のスケジュール | PERT とクリティカルパス/フィット&ギャップ分析/期間短縮技法 |
| 令和元年秋 | 複数拠点の開発チーム運営 | 要員異動/成果物の共有/疎結合設計/EVM と EAC |
| 令和 2 年 10 月 | 稼働延期に伴う計画変更 | 障害分析/工数と期間の再見積り/導入可否判断基準 |
| 令和 3 年春 | システム開発のコスト見積り | 準委任と請負/類推法/積上げ法/FP 法/予備費 |
| 令和 3 年秋 | 家電メーカのアジャイル開発 | スクラムの 3 役割/ベロシティ/バーンダウン/優先順位 |
| 令和 4 年春 | 販売システム再構築の調達 | 派遣法と偽装請負/ユースケース図/品質確認の条項 |
| 令和 4 年秋 | プロジェクトのリスク管理 | RBS/特定手法の限界/特性要因図/デシジョンツリー |
| 令和 5 年春 | 金融機関システムの移行 | 一括移行と段階移行/ステコミ承認/本番データの匿名加工 |
| 令和 5 年秋 | 金融の新サービス開発 | アジャイル採用の理由/内製か委託か/PO の適性/MVP |
| 令和 6 年春 | 農業 DX のスコープ管理 | PoC 先行の理由/守秘契約/3 ベースライン/スコープクリープ |
| 令和 6 年秋 | ヘルスケア新事業のマネジメント | 新事業の市場面と製品面の特性/抵抗するステークホルダ |
| 令和 7 年春 | CCPM によるスケジュール管理 | 加重総和法/最早と最遅/クリティカルチェーン/2 種のバッファ |
| 令和 7 年秋 | ウォータフォールとアジャイルの混在 | 混在モデル/EVM の PV・EV/バーンダウン/チケット管理 |
形式は合計 130 設問・1 問あたり必ず 6〜8 個(平均 6.8)で、字数記述 57.7%・記号選択 19.2%・計算 10.0%・用語記述 8.5% です。記号と用語で約 3 割を占めるので、ここを先に確定すれば部分点が積み上がります。字数は 25 字と 35 字が中心で、40 字を超える設問は 19 回で 1 つもありません。計算があったのは 19 回中 9 回、1 問につき 1〜2 設問で、四則演算と期待値の範囲です。前提知識は第 15 章がそのまま土台になります。
頻出論点はベンダ選定と調達文書が 6 回、パッケージやクラウドの導入判断とフィット&ギャップ分析が 6 回、ステークホルダとステアリングコミッティが 6 回、コストと工数の見積りが 6 回、要員計画とチーム編成が 6 回で並びます。続いて契約形態と法務 5 回、リスクの特定・分析・対応 5 回、品質管理と障害分析 5 回です。人選理由を本文の経歴記述から拾わせる設問が定番で、知識ではなく読み取りで解けます。
- 冒頭 1〜2 段落で企業・システム・目的をつかむ。表は本文より先に構造だけ見る
- 設問を全部先読み(2 分)。計算設問の有無をここで確認する
- 通読しながら解く(8 分)。登場人物の所属・役職・経歴、契約形態と発注の向き、数値と単位、「〜が心配だ」という発言、「ただし」「なお」の制約文にマークする
- 記号選択と用語記述(3 分)を先に片付ける
- 計算(5 分)。式を書く前に使う数値を本文と表から列挙する
- 字数記述(8 分)。25 字なら根拠と結論、35〜40 字なら根拠と対象と結論で組む
| 失点パターン | 何が起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| 設問文の限定条件を無視する | 「費用面の」対応策を問われて工程の話を書く | 設問文の限定語に印を付け、解答を書いた後に照合する |
| 本文の根拠を読み落とす、丸写しする | 条件に踏み込まず原文をなぞっただけの解答になる | 本文の語をつなぎ変えて設問の観点に答える |
| 要素が 2 つあるのに 1 つで止める | 評価表の改善で「運用保守費用」だけ書き、重み付けに触れない | 35 字以上なら要素を 2 つ探してから書き始める |
| 用語の意味を押さえず類似語を混同する | フィット&ギャップ分析・RBS・FP 法・予備費 2 種を取り違える | 第 15 章の対比表で「何と何が違うか」を口に出す |
| 目的を問われて手段や現象を書く | 「可視化するため」と答え、期間内に終わらせるという目的に届かない | 手段を書いたら「何のためか」をもう一段たどる |
向いているのは、業務システムの導入現場を知る人、契約や見積りの実務語彙に抵抗がない人、本文の表から条件を拾える人です。プログラミングやネットワークの知識が薄くても、読解と用語の正確な理解だけで得点できます。逆に、用語を雰囲気で覚えている人は混同で崩れます。全体正答率は平成 31 年春まで「低」が 4 回続きましたが、令和 2 年 10 月以降は「平均」が定着しています。
6. サービスマネジメント(問 10)
19 回とも問 10 に固定です。舞台は「新サービス立ち上げに伴うサービスデスクと SLA の新設」と「クラウド移行時の責任分界と能力設計」の 2 系統が繰り返され、業種は広いものの業種知識は要求されません。運用の登場人物(利用者部門・提供部門・内部供給者・外部供給者)と、その間にある契約・SLA・OLA を追えれば解けます。
| 回 | 題材 | 主要論点 |
|---|---|---|
| 平成 28 年春 | チケット販売のキャパシティ | 段階的増強/需要予測/需要管理 |
| 平成 28 年秋 | クラウド移行に伴うサービス変更 | 責任分界/RFC と CMDB/切り戻し |
| 平成 29 年春 | 流通業のサービスデスク運用 | 既知の誤りと問題の区分/傾向分析/CSF |
| 平成 29 年秋 | サービスデスクの設計 | CTI と SPOC/FAQ/解決目標時間 |
| 平成 30 年春 | データセンタの電源障害 | UPS の冗長化/エスカレーション/DR |
| 平成 30 年秋 | 顧客管理システムのキャパシティ管理 | 3 サイクル/暫定策と恒久策/しきい値 |
| 平成 31 年春 | SLA によるアウトソーシング | SLA 設計/役割分担/責任範囲外の除外 |
| 令和元年秋 | インシデント対応の改善 | OLA/監視の自動化/窓口の一本化/KPI |
| 令和 2 年 10 月 | 講座サービスの予算と会計 | 直接費と間接費/TCO/ログによる按分 |
| 令和 3 年春 | SaaS 型営業支援サービス | SLA の算出/説明責任/SPOC/FAQ |
| 令和 3 年秋 | 物流企業の変更管理 | RFC の優先度/CAB/切り戻し/PIR |
| 令和 4 年春 | 業務システムの障害対応 | 優先度/エスカレーション/既知の誤り |
| 令和 4 年秋 | サービス変更の計画 | 成果の定量的な定義/追加作業/人日換算 |
| 令和 5 年春 | クラウドの可用性管理 | MTBF と MTRS/稼働率の計算/遠隔地保管 |
| 令和 5 年秋 | 社内サービスの SLA 設定 | SLA の目標値/OLA/回復時間の計測範囲 |
| 令和 6 年春 | テレワークの展開管理 | SPOC/初期サポートの終了基準/展開管理 |
| 令和 6 年秋 | サービスデスクの立上げ | サービス要求管理/標準変更への移行/要員工数 |
| 令和 7 年春 | クラウド移行のキャパシティ | 監視イベントの分類/IaaS/計画の見直し |
| 令和 7 年秋 | 社内手続のサービスデスクと FAQ 運用 | SPOC/停止許容時間の計算/自己解決率 |
設問は合計 124 枝・1 問平均 6.5 で、最少 4 枝(令和 4 年秋)から最多 9 枝(令和 5 年春)までばらつきます。形式の出現数は字数記述 78 件(19 回すべて)、記号選択 36 件(15 回。令和 4 年秋・令和 6 年秋・令和 7 年春・令和 7 年秋は 0)、用語記述 10 件、計算 5 件です。記号選択が近年減り、代わりに計算が令和 3 年春以降ほぼ毎回入るのがこの分野の変化で、対象は稼働率・停止許容時間・工数です。字数は 25 字(15 個)と 40 字(13 個)の二大ピークで、20〜40 字帯が約 67% を占めます。短答は用語の穴埋め、長答は理由・目的・対策という住み分けです。前提知識は第 16 章です。
頻出論点はインシデント管理(優先度と解決目標時間)が 10 回で最多、SLA のレベル項目と目標値 8 回、サービスデスクと SPOC 7 回、エスカレーション 7 回、変更管理(RFC・CAB・標準変更・PIR)6 回、KPI と CSF の設定 6 回、クラウドの責任分界 5 回と続きます。設問はほぼ「問合せ → インシデント → 既知の誤り → 問題 → RFC → 変更 → リリース・展開 → PIR」という 1 本の線上を指すので、この連鎖のどこの話かを毎回確認します。
- 構成図・体制図から関係を書き出す。誰と誰の間に契約・SLA・OLA があるかをメモに起こす
- 設問を全部先読みし、何の観点で・誰が実施することを問うているかに印を付ける
- 下線部と空欄の直前 2〜3 行を精読する(8 分)。根拠はほぼここにある
- 短答と記号(5 分)、計算(5 分)、長文記述(8 分)の順に進め、40 字級は最後に回す
- 見直し(3 分)は「観点」「主体」「文末」の 3 点だけを見る
マークすべきは、提供時間・計画停止・解決目標時間、件数と増加率、「〜以内」「〜か月前までに」といった制約条件、表の項番と機能名(項番で答えさせる設問が頻出)、そして「〜ができていない」という記述です。最後のものは対策記述のネタがそのまま置かれている場所です。
| 失点パターン | 何が起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| 一般論で止まり具体化できない | 「定期的に見直す」で終わり、定期計測と見積り見直しに触れない | 本文の固有名詞(表の項番・機能名・時間)を 1 つは入れる |
| 設問が指定した観点・主体を外す | サービスデスク以外の施策を問われてデスクの改善を書く | 設問の観点を書き写し、書いた後に照合する |
| 目的・理由・根拠を取り違える | 目的を問われて理由を、成果を問われて手段を書く | 文末の型を先に決めてから中身を埋める |
| 用語の定義を混同する | 階層的と機能的のエスカレーション、既知の誤りと回避策を取り違える | 第 16 章の弁別表を、対になる語だけ暗唱する |
| 責任分界と役割分担を落とす | クラウド側の復旧後に自社がすべき確認作業に触れない | 「供給者の範囲外は誰がやるか」を毎回 1 度考える |
向いているのは、用語の定義を弁別できる人、運用保守の実務感覚がある人、本文の条件を 25〜40 字にまとめられる人です。専門技術の深さは要りません。向かないのは「〜の観点から」「目的を」という縛りを読み飛ばす人で、この分野は観点を外すとその小問が丸ごと 0 点になります。全体正答率は「低」5 回・「やや低」4 回と 4 分野で最も荒れますが、「低」は平成 31 年春までに集中し、令和 3 年秋以降は「平均」中心です。
7. システム監査(問 11)
19 回とも問 11 に固定で、4 分野で最も構造が読みやすい問題です。全 19 問が「予備調査で概要を把握し、監査要点案の表を作り、監査部長が指示を出す。その指示の空欄を埋める」という同じ枠に収まっています。技術知識はほとんど要求されず、計算は 19 回で 1 本もありません。
| 回 | 題材 | 主要論点 |
|---|---|---|
| 平成 28 年春 | 業績管理システム | 監査要点の設定/証拠の相互照合 |
| 平成 28 年秋 | 住宅販売会社の ID 管理 | 権限マスタとの突合/棚卸の証跡 |
| 平成 29 年春 | 新会計システムの運用 | 入力権限と承認権限/適時性 |
| 平成 29 年秋 | 受発注業務 | 例外処理/兼務/入力と承認 |
| 平成 30 年春 | 債権管理システムの要件定義 | 証拠の十分性/根拠資料 |
| 平成 30 年秋 | ERP の運用・保守体制 | 保守作業記録/開発用 ID の残存 |
| 平成 31 年春 | RPA の導入・運用 | 実行ログ/インタフェースの不整合/障害対応 |
| 令和元年秋 | 購買業務のリスク評価 | 再計算/職務の分離/移行ログ |
| 令和 2 年 10 月 | 販売システム | 独立性/突合・照合法 |
| 令和 3 年春 | 新会計システム | 入力者と承認者/承認の欠落 |
| 令和 3 年秋 | カード会社の構築工程の監査 | 報告時期/資料の選定/母集団 |
| 令和 4 年春 | 販売物流システム | 売上訂正の権限/委託先/代替統制 |
| 令和 4 年秋 | テレワーク環境 | 終了届の突合/是正の監視 |
| 令和 5 年春 | 工場の在庫管理 | 自動化統制と手作業統制/ID の共有 |
| 令和 5 年秋 | 通販システムの事業継続計画 | 計画の構成要素/RTO/訓練の基準 |
| 令和 6 年春 | 支払管理パッケージ | 規程に適合しない標準機能/複数承認 |
| 令和 6 年秋 | チャットボットの導入 | 学習データの分離/目標レベル |
| 令和 7 年春 | 勤務管理システム | 入力コントロール/対応期限 |
| 令和 7 年秋 | グループ会社のアクセス権点検 | 代替の管理策/点検の形骸化 |
題材はアクセス管理・ID 権限・職務分離が 5 問、基幹業務の処理統制が 7 問、開発工程の監査が 3 問、新技術と働き方が 2 問、運用保守と事業継続が 2 問です。会計・支払・債務を扱う回が 4 問で最頻、ID と権限と職務分離は副論点まで数えると実質 9 問に登場します。
小問は合計 146 個・1 問平均 7.7 個で、11 分野を通じて最多です(最少 6 個、最多 9 個)。形式は字数記述 72.6%・記号選択 17.1%・穴埋め 6.2%・用語記述 4.1% ですが、字数記述の中身は大半が空欄への字句記入で、事実上の長文穴埋め問題です。字数は 10 字以内が 67 本(63%)、15 字以内までで 82 本(77%)に達し、40 字の設問は 1 本もありません。令和 6 年秋以降は 15 字以内だけになりました。用語記述 6 本のうち 4 本は「表 1 の項番を答えよ」という、この分野に特有の形式です。前提知識は第 17 章です。
- 設問を先読み(3 分): 空欄記号と字数制限、「本文中の字句を用いて」「解答群から」「順不同」に印を付ける
- 本文を 4 ブロックで読む(10 分): 概要 → 業務プロセス(誰が入力し誰が承認するか)→ 発生した事案 → 監査要点案の表
- マークする: 部署名と役職名、データ名・帳票名・管理表名(資料名は解答語彙そのもの)、「〜することになっている」と「〜していなかった」の対比、日付・期限・頻度、「一部の」「例外的に」、兼務と共用
- 空欄を往復して埋める(8 分): 迷った空欄も該当ブロックの語を入れて先に進む。読み返しは 1 回まで
- 推敲と見直し(7 分): 主体が書けているか、資料名は本文表記か、時期・期限が入っているかの 3 点を見る
| 失点パターン | 何が起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| 本文の状況設定・前提を読み落とす | 一般的な統制を書いてしまい、その会社の事情に合わない | 「発生した事案」のブロックを解答前にもう一度見る |
| 「誰が」が書けていない | 主語のない手続になり、職務分離の答えとして成立しない | 統制型は「〈主体 A〉と〈主体 B〉を別にする」の型で書く |
| 資料名とデータ名を取り違える | 閲覧すべき資料を問われて画面やデータの名前を書く | 本文中の帳票名・管理表名だけを解答語彙にする |
| 証拠を並べるだけで監査要点と噛み合わない | 「移行作業表を閲覧する」で足りると考えてしまう | 要点 → 手続 → 証拠の三段が対応しているか声に出す |
| 時期・期限の指定が漏れる | 是正の確認や訓練の実施に「いつまでに」が入らない | 本文の日付・頻度をそのまま解答に入れる |
向いているのは、業務プロセスと承認フローを日本語で追える人です。技術知識をほぼ要求せず、解答の 63% は 10 字以内で多くは本文の語の抜き出しなので、文系・非開発職に最も安定した得点源になります。向かないのは、本文 3〜4 ページと表 2〜3 個を読むのが遅い人です。条件を 1 か所落とすと即失点で、部分点で粘る余地が小さいのがこの分野の怖さです。全体正答率は「平均」11 回で、令和 2 年 10 月以降の 11 回は「平均」か「やや低」に収まっています。
8. 当日の運び ― 4 問を 5 分で決める
科目 B は 150 分で 5 問です。1 問 30 分が上限で、選択の時間と見直しの時間はそこから捻出します。分野の配置が 19 回とも同じなので、当日に見るのは難易度ではなく分量と形式だけです。図 25-7 の順に 3 つ確認すれば 5 分で決まります。
| 時刻 | 作業 |
|---|---|
| 0〜5 分 | 問 2〜11 をスキャンして 4 問を決める。図表の種類・形式の内訳・計算の個数だけを見る |
| 5〜32 分 | 問 1(情報セキュリティ)を解く |
| 32〜140 分 | 選択した 4 問を各 27 分で解く。得意分野から順に |
| 140〜150 分 | 全体の見直し。空欄を潰すことを最優先にする |
問 1 から解く理由は 3 つあります。必須なので避けられず後回しにしても時間が減るだけであること、正答率が 19 回中 16 回で「平均」以上あり得点が読めること、最初に解くので 35 分を超えると選択問題を圧迫することです。ただし 19 回中 18 回で正答率の低い設問が 1〜3 個仕込まれるので、深追いはしません。
撤退の基準も先に決めておきます。問 11 は読み返しを 1 回までとし、迷った空欄も該当ブロックの語を入れて先へ進みます。問 2・9・10 は記述 1 問に 3 分以上迷ったら空欄のまま次へ行き、記号選択と用語記述を先に埋めます。1 問を完璧にするより、4 問すべてで 6 割を積むほうが基準点に届きます。
- 空欄が残っていないか(最優先)
- 解答の主体が設問の主語と一致しているか
- 文末が問い方に対応しているか(理由なら「〜から」、目的なら「〜ため」)
- 字数は上限の 8 割以上あるか
- 単位・桁数・切上げと切捨ての指定に従っているか
- 「本文中の字句を用いて」の指定を守ったか
ひっかけポイント
演習問題(科目 B 形式)
本番は 1 問あたり 6〜8 小問ですが、ここでは各分野の急所に絞って 3〜4 設問にしています。1 題 15 分を目安に、必ず紙ではなく画面のメモ機能を想定して関係を書き出しながら解いてください。解答例は 1 つの正解ではなく、採点ポイントを満たす書き方の見本です。
演習 1 調剤薬局チェーンの成長戦略(問 2 相当)
〔S 社の概要〕 S 社は、地方都市を中心に 60 店舗の調剤薬局を運営している。売上の 9 割は処方箋に基づく調剤報酬で、残りは店頭での日用品販売である。近隣の医療機関の門前に出店する形態を取ってきたが、この 3 年で周辺に大手チェーンの出店が相次ぎ、1 店舗当たりの処方箋受付枚数は減少している。医薬品の仕入れは各店舗の薬局長が個別に卸へ発注しており、店舗ごとに仕入単価が異なる。経営会議は、経営企画部の T 部長に中期成長戦略の策定を指示した。
〔外部環境の分析〕 T 部長は外部環境を 4 つの観点で整理した。① 高齢化が進み、在宅で療養する患者が増えている。② オンラインでの服薬指導が制度として利用できるようになり、患者は薬局に足を運ばずに指導を受けられる。③ 大手チェーンの出店が続き、門前という立地の希少性が薄れている。④ 薬剤師の採用競争が激しく、人件費が上昇している。T 部長は、①と②を社会全体の変化として、③と④を業界内の競争関係の問題として区別した。
〔自社の強みと弱み〕 S 社の強みは、地域の医療機関と 20 年かけて築いた関係と、全店舗が同じ電子薬歴システムを使っていて患者の服薬履歴を一元管理できていることである。弱みは、仕入れが店舗ごとに分散していることと、在宅訪問に対応できる薬剤師が全社で 8 名しかいないことである。
〔成長戦略の検討〕 T 部長は 2 つの施策を提案した。施策 A は在宅医療支援サービスの開始で、訪問して薬剤管理指導を行う薬剤師を増員し、既存の医療機関との関係を通じて患者の紹介を受ける。施策 B は医薬品の仕入れを本部へ集約するもので、60 店舗分の発注をまとめ、卸との交渉を本部が一括して行う。経営会議では「施策 B は在宅医療と無関係ではないか」という意見が出たが、T 部長は①施策 B で生まれる原資を施策 A の人件費に充てられると説明した。なお、施策 A の初期投資は 2 億 4,000 万円、開始後の年間の税引後利益は 4,000 万円、減価償却費は年 2,000 万円と見込んでいる。
設問 1 T 部長が ①② と ③④ を分けて整理したとき、それぞれが対応する分析の枠組みの名称を、各 10 字以内で答えよ。
設問 2 施策 A は、外部環境のどの変化と自社のどの強みを組み合わせたものか。本文中の字句を用いて 35 字以内で述べよ。
設問 3 下線 ① について、施策 B によって原資が生まれるのはなぜか。30 字以内で述べよ。
設問 4 施策 A の投資の回収期間は何年か。
解答例と採点ポイント(演習 1)
設問 1 ①②:PEST 分析/③④:ファイブフォース分析。
採点ポイント: 社会全体の変化はマクロ環境、業界内の競争関係は業界構造の分析という階層の違いで選びます。両方に SWOT と答えるのは、統合の枠組みと分析の枠組みを混同した誤りです。
設問 2 在宅で療養する患者の増加を見込み、地域の医療機関との関係を生かす(32 字)。
採点ポイント: 外部の機会と内部の強みの両方を入れます。「在宅医療の需要が増えるから」だけでは片方で、これが講評で毎年指摘される「2 要素の片方しか書かない」誤答です。「本文中の字句を用いて」の指定があるので、機会と強みは本文の表現のまま使います。
設問 3 60 店舗分の発注をまとめることで仕入単価を下げられるから(28 字)。
採点ポイント: 「発注をまとめるから」で止めると手段だけの解答です。規模の経済によって仕入単価が下がるという一段先まで書いて初めて「原資が生まれる」理由になります。文末は理由を問われているので「〜から」にします。
設問 4 4 年。
採点ポイント: 年間キャッシュフローは税引後利益 4,000 万円に減価償却費 2,000 万円を足し戻して 6,000 万円です。24,000 ÷ 6,000 = 4 年。減価償却費を足し忘れると 6 年になります。減価償却費は現金の支出を伴わないことを毎回思い出す小問です。
演習 2 大学の学務システムの運用改善(問 10 相当)
〔U 大学の学務システム〕 U 大学の情報システム部は、学生と教員が利用する学務システムを運用している。機能は履修登録・成績照会・シラバス参照の 3 つで、サービス提供時間は平日の 8 時から 22 時までの 14 時間である。土曜・日曜と、毎月第 3 日曜日に行う 6 時間の計画停止は、サービス提供時間に含めない。利用者からの問合せは、教務課の窓口・情報システム部への内線電話・メールの 3 経路で受け付けている。
〔履修登録期間の状況〕 履修登録期間は年 2 回あり、それぞれ 10 営業日である。この期間の問合せ件数は通常月の 6 倍に増える。前年度の履修登録期間には、開始初日の 9 時台にアクセスが集中して応答が遅くなり、学生が同じ操作を繰り返したことで処理の滞留がさらに増えた。情報システム部は、サーバの CPU 使用率が 80% を超えていたことをアクセスログから後日把握したが、発生時には気付いていなかった。また、教務課の窓口で受けた問合せの一部が情報システム部に伝わらず、同じ不具合の報告が 3 日後に別の経路から届いた例があった。
〔次年度に向けた改善案〕 情報システム部の K 課長は、次の改善案をまとめた。改善案 1 は、問合せの受付を教務課の窓口に一本化し、記録の様式を統一することである。改善案 2 は、CPU 使用率のしきい値を 70% に設定し、超過したときに運用担当者へ通知することである。改善案 3 は、履修登録期間の前に、前年度の同じ期間の負荷実績をもとにサーバの台数を見直すことである。学長室からは「サービスの目標を数値で示してほしい」との要望があり、K 課長は履修登録期間 10 営業日の稼働率目標を 99% とする案を作成した。
設問 1 改善案 1 のように問合せの受付窓口を 1 か所にまとめる考え方を、英字 4 字で答えよ。
設問 2 改善案 1 によって解消される、前年度に起きた問題は何か。40 字以内で述べよ。
設問 3 改善案 2 の目的を 30 字以内で述べよ。
設問 4 履修登録期間の 10 営業日について、稼働率の目標 99% を満たすために許容される停止時間は何時間か。
解答例と採点ポイント(演習 2)
設問 1 SPOC。
採点ポイント: Single Point of Contact の略で、窓口を単一にする考え方です。用語の名前だけでなく「記録が 1 か所に集まるので追跡できる」という効果まで結び付けて覚えます。
設問 2 教務課が受けた問合せが情報システム部に伝わらず、不具合の把握が遅れる問題(36 字)。
採点ポイント: 主体を 2 つ(教務課と情報システム部)入れるのが要件です。「情報が共有されない問題」では一般論で、本文の 3 日後という具体的な事象に結び付いていません。40 字の枠なので、主体・条件・結果の 3 要素で組みます。
設問 3 使用率の上昇に気付かず応答が遅くなる事態を未然に防ぐため(28 字)。
採点ポイント: 目的を問われているので文末は「〜ため」です。「しきい値を 70% に設定するため」は手段の言い換えで 0 点、「CPU 使用率を監視するため」も現象の説明にとどまります。前年度は事後にしか把握できなかったという本文の事実に対応させます。
設問 4 1.4 時間。
採点ポイント: サービス提供時間は 14 時間 × 10 営業日 = 140 時間です。計画停止は提供時間に含めないと本文にあるので、第 3 日曜日の 6 時間を引いたり足したりしません。停止許容時間 = 140 × (1 − 0.99) = 1.4 時間。土日と計画停止の扱いを読み落とすと分母がずれます。
演習 3 ふるさと納税ポータルの発送・精算の監査(問 11 相当)
〔F 市の概要〕 F 市は、ふるさと納税の寄附受付を外部のポータル運営会社 P 社に委託している。寄附者が P 社のポータルで返礼品を選んで寄附を申し込むと、P 社から F 市の財政課へ寄附データが日次で連携される。財政課は寄附データを寄附管理システムに取り込み、返礼品の発注データを地元の事業者へ送る。事業者は返礼品を発送し、発送実績報告を月末にまとめて財政課へ提出する。財政課は事業者からの請求書と発送実績報告とを照合して支払う。事業者は返礼品を発送する際、配送業者が発行する送り状の控えを保管している。
〔業務の状況〕 寄附管理システムへの寄附データの取込みは、財政課の担当者 A が実施する。取込みの結果は取込結果一覧に出力され、エラーとなったデータは保留ファイルに退避される。保留ファイルの内容は担当者 A が修正して再度取り込むが、修正について承認を受けることにはなっていない。返礼品の発注は、担当者 A が寄附管理システムで発注データを作成し、財政課長が承認する。ただし繁忙期には、財政課長が不在のときに担当者 A が課長の利用者 ID を用いて承認した例があった。事業者からの発送実績報告は表計算ソフトのファイルで届き、担当者 A が発注データと突き合わせる。前年度には、ある事業者から発送実績報告が提出されないまま請求書だけが届き、担当者 A が発注データを実績とみなして支払った例があった。
〔監査要点案と監査部長の指示〕 内部監査室は、要点 1「寄附データが正確に寄附管理システムへ取り込まれていること」、要点 2「返礼品の発注が権限のある者によって承認されていること」、要点 3「支払が実際の発送に基づいて行われていること」の 3 つを監査要点案とした。監査部長は次のように指示した。「要点 1 では、[ a ] の内容と修正後のデータとを照合し、修正が適切に行われたことを確かめてほしい。要点 2 については、[ b ] が承認した事実があるので、担当者 A が [ c ] の両方を行える状態になっていないかを確かめること。要点 3 では、発送実績報告が入手できない場合に、財政課が支払前に確認すべき代替の資料を確かめてほしい。」
設問 1 [ a ] に入れる字句を、本文中の字句を用いて 10 字以内で答えよ。
設問 2 [ b ] に入れる字句を 15 字以内で答えよ。
設問 3 [ c ] に入れる字句を 15 字以内で答えよ。
設問 4 要点 3 について、財政課が支払前に確認すべき代替の資料を 20 字以内で答えよ。
解答例と採点ポイント(演習 3)
設問 1 保留ファイル(6 字)。
採点ポイント: 本文表記のまま書きます。「エラーになったデータ」「取込みに失敗した明細」と説明してしまうと、資料名ではなくデータの説明になり不可です。監査で最も配点効率が高いのは、この本文の語をそのまま入れる作業です。
設問 2 課長の ID を使った担当者 A(13 字)。
採点ポイント: 主語が答えの本体です。「課長の利用者 ID」だけでは、承認したのが誰かが特定できません。15 字の枠でも主体を残し、修飾語のほうを削ります。
設問 3 発注データの入力と承認(11 字)。
採点ポイント: 職務の分離が論点なので、兼務している 2 つの行為を並べます。「承認権限」だけでは、入力との兼務という問題の形が表せません。統制型は「〈主体 A〉と〈主体 B〉を別にする」、リスク型は「〈主体〉が〈行為〉できるので〜される」の型で書きます。
設問 4 配送業者が発行する送り状の控え(15 字)。
採点ポイント: 発注データは F 市の内部で作った記録なので、発送の事実を裏付ける証拠になりません。事業者や配送業者の側で発生する記録を選ぶのが代替統制の考え方です。資料名で答え、「発送の履歴」のようなデータ名で答えないことも要件です。
まとめ
- 問 2・9・10・11 は 19 回とも同じ配置。選ぶ分野は学習開始時に決められる
- 字数記述の比率は問 9 の 57.7% から問 11 の 72.6% まで。計算は問 9 が 10.0% で最大、問 11 は 0%
- 小問数は問 11 が 1 問 7.7 個で最多。読む量と書く量は監査が最大で、4 分野の全採用は避ける
- 記述は「文末を問い方に合わせ、字数の分だけ要素を入れる」。25 字で 2 要素、40 字で 3 要素
- 計算は EVM・クリティカルパス・稼働率と停止許容時間・損益分岐点と回収期間の 4 系統だけ
- 「本文中の字句を用いて」は言い換えない。監査では指定がなくても本文表記のまま入れる
- 当日は 5 分で 4 問を決め、1 問 27 分・見直し 10 分。空欄を残さないことが最優先
ここまでが本書の全 25 章です。総復習は、分野ごとに「知識の章」と「解き方の章」を往復するのが最短経路になります。科目 A の知識は第 2〜22 章、科目 B の解き方は第 23〜25 章で、対応は次のとおりです。
| 問 | 分野 | 知識の章(科目 A) | 解き方の章(科目 B) |
|---|---|---|---|
| 1(必須) | 情報セキュリティ | 第 11・12 章 | 第 23 章 |
| 2 | 経営戦略・情報戦略 | 第 18・19・21 章 | 第 25 章 |
| 3 | プログラミング | 第 3 章 | 第 24 章 |
| 4 | システムアーキテクチャ | 第 5 章 | 第 24 章 |
| 5 | ネットワーク | 第 10 章 | 第 24 章 |
| 6 | データベース | 第 9 章 | 第 24 章 |
| 7 | 組込みシステム開発 | 第 7 章 | 第 24 章 |
| 8 | 情報システム開発 | 第 13・14 章 | 第 24 章 |
| 9 | プロジェクトマネジメント | 第 15 章 | 第 25 章 |
| 10 | サービスマネジメント | 第 16 章 | 第 25 章 |
| 11 | システム監査 | 第 17 章 | 第 25 章 |
科目 A のうち、この表に現れない第 2・4・6・8・20・22 章(基礎理論、コンピュータ構成、ソフトウェア、ユーザーインタフェースとマルチメディア、ビジネスインダストリ、法務)は科目 A 専用の得点源です。80 問中の出題数は多く、ここを落とすと科目 B に進めません。科目 A が基準点未満なら科目 B は採点されないためです。
2026 年度前期は、科目 A が 2026 年 10 月 28 日から 11 月 10 日まで、科目 B が 11 月 24 日から 12 月 6 日までです。後期は科目 A が 2027 年 2 月 6 日から 2 月 19 日まで、科目 B が 3 月 3 日から 3 月 15 日までとなっています。会場ごとに実施日と時間帯が異なり、空席のある会場と日を選んで申し込む方式なので、科目 A の後に 2 週間以上の準備期間を自分で設計できます。この期間に本章と第 23・24 章の演習を回すのが、CBT 方式になって初めて可能になった戦い方です。
成績の見え方も覚えておきます。科目 A の得点は試験終了後に試験端末とマイページで確認できますが、科目 B の得点は試験端末には表示されません。手応えが分からないまま数週間を過ごすことになるので、終わった科目のことは考えず、次の科目の準備に切り替えるのが得策です。
本書の 25 章は、科目 A の 80 問と科目 B の 5 問を、どちらも「型」で解き切るために書きました。科目 B の 4 分野は、知識量ではなく本文の根拠を拾って設問の観点で言い換える手続きで点が決まります。手続きは練習した回数だけ速く正確になります。演習 3 題を時間を測って解き直し、解答例の採点ポイントを自分の答案に当てはめるところまでやれば、当日の 150 分は同じ作業の繰り返しになります。