応用情報技術者試験 合格教科書|2026年度(令和8年度)対応
第 19 章|科目 A 例年 5 問前後(中分類 19・20 合算で直近 10 年 19 回に 97 問、1 回平均 5.1 問)/科目 B 経営戦略の土台 科目 B: 経営戦略/情報戦略

経営戦略マネジメントと技術戦略マネジメント

SWOT・PPM・5 フォース・アンゾフ・BSC などの分析フレームワークを図で使い分け、技術戦略(MOT・ロードマップ)まで押さえる

この章で学ぶこと

科目 A では中分類 19(経営戦略マネジメント)と中分類 20(技術戦略マネジメント)を合わせて、直近 10 年 19 回で 97 問、1 回平均 5.1 問が出ています。直近 5 回(令和 5 年秋〜令和 7 年秋)は平均 5.8 問とやや増加傾向です。4 問確保が目標です。計算はほとんど出ず、フレームワークの定義と象限の判定がそのまま得点になるので、投資効率が非常に高い分野です。科目 B で「経営戦略/情報戦略」の問題を選ぶ人にとっては、本章がそのまま土台になります。

経営戦略の階層と全社戦略

経営戦略は「会社をどこへ向かわせるか」を決める意思決定です。試験で問われるのは、階層のどこにいる話なのかとその階層で使う分析手法は何かの 2 点です。フレームワークの名前だけを覚えると、選択肢に他の階層の手法が並んだときに区別できません。図 19-1 の対応を先に頭に入れてください。

企業理念・ビジョン 全社戦略(企業戦略) 事業戦略(競争戦略) 機能別戦略(営業・生産・財務) PPM・多角化・M&A 5 フォース・SWOT・アンゾフ 4P・STP・生産計画
図 19-1 戦略の階層と分析手法の対応。上の階層ほど「どの事業をやるか」、下の階層ほど「どう売るか・どう作るか」を決めます。手法名を問われたら、まずこの階層のどこの話かを見分けます。

全社戦略で問われる用語

全社戦略は「どの事業をどれだけやるか」の意思決定です。事業の範囲を決めることをドメインの定義といい、複数事業をもつことで生まれる相乗効果をシナジー効果と呼びます。規模を大きくして単位当たりコストを下げるのが規模の経済、複数事業で設備・ブランド・ノウハウを共用してコストを下げるのが範囲の経済です。この 2 つは科目 B でも区別を問われます。

用語意味試験での見分け方
規模の経済生産量が増えるほど製品 1 個当たりの固定費が下がる「同じものを大量に」
範囲の経済複数事業で経営資源を共用してコストを下げる「別の事業と共用」
経験曲線効果累積生産量が増えるほど習熟して単位コストが下がる「累積」「習熟」
シナジー効果事業の組合せで単独の合計より大きな効果が出る「1 + 1 が 2 を超える」
コアコンピタンス他社が模倣できず複数事業に展開できる中核能力「模倣困難」「中核」
ダイナミックケイパビリティ環境変化に合わせて経営資源を組み替える能力「変化への対応力」
ベンチマーキング優れた他社(ベストプラクティス)と比較して改善点を見つける「他社と比較」

外部の資源を取り込む手段も頻出です。M&A(Mergers and Acquisitions:合併と買収)は企業そのものを取得する手段で、上場企業の株式を市場外で買い集めるTOB(Take Over Bid:公開買付け)はその一形態です。買収前に対象企業の財務・法務・事業リスクを調査することをデューデリジェンスといいます。「買収した後の統合作業」と取り違えさせる肢が定番なので、投資判断より前の調査だと覚えてください。

手段内容独立性
M&A合併・買収により事業と組織ごと取得する失われる(一体化)
アライアンス(業務提携)資本関係を持たず、契約で協業する保たれる
ジョイントベンチャー(合弁)複数社が出資して新会社を設立する新会社を共同保有
アウトソーシング自社の業務・機能を外部に委託する委託先は別企業
垂直統合調達・製造・販売など前後の工程を自社に取り込む自社に内製化
シェアードサービスグループ内の間接業務を 1 か所に集約するグループ内
出題実績 中分類 19 の「全社戦略の策定」からは直近 10 年で 6 問(コアコンピタンス・垂直統合・デューデリジェンス・ファブレス・ファウンドリ・クラウドソーシング が各 1 回)出ています。1 テーマ 1 回ずつなので、深追いせず用語表で 1 往復するのが効率的です。半導体のファブレス(設計専業)とファウンドリ(製造受託専業)は第 20 章の受託製造と同じ論点です。

新しい事業の芽を外から取り込む形として、ベンチャービジネスへの出資(VC:ベンチャーキャピタル、事業会社が行う場合は CVC:コーポレートベンチャーキャピタル)、起業を支援するインキュベーター、不特定多数から資金を募るクラウドファンディング、不特定多数に業務を委託するクラウドソーシングがあります。「資金」を集めるのがファンディング、「労働力」を集めるのがソーシングです。複数の企業が相互に依存しながら共存する事業環境をエコシステム、親会社が子会社群を含めた全体で最適化を図る経営をグループ経営と呼びます。

近年の用語例も押さえます。SDGs(持続可能な開発目標)、資源を循環させるサーキュラーエコノミー、気候関連の財務情報を開示するTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)開示、環境・社会・ガバナンスを投資判断に組み込むESG 投資(その前身が SRI:社会的責任投資)は、いずれも「非財務情報も企業価値の一部」という同じ流れにあります。変化の激しさを表すVUCA、顧客や外部と共に価値を作るコ・クリエーション戦略、特許情報を経営戦略の立案に使うIP ランドスケープも用語例に入っています。組織を変える取り組み全体がチェンジマネジメントで、その浸透モデルがADKAR(Awareness 認知 → Desire 欲求 → Knowledge 知識 → Ability 能力 → Reinforcement 定着)です。

PPM ― 事業ポートフォリオを 2 軸で切る

PPM(Product Portfolio Management:プロダクトポートフォリオマネジメント)は、複数事業を市場成長率(縦軸)と相対的市場シェア(横軸)の 2 軸で 4 象限に分け、どこに資金を配るかを決める手法です。この章で最も出題が多いテーマで、直近 10 年 19 回のうち 6 回、しかもすべて問 67 に置かれています。

覚えるべきことは 2 つだけです。縦軸と横軸が何かと、資金がどちらへ流れるかです。

相対的市場シェア 高 相対的市場シェア 低 市場成長率 高 市場成長率 低 花形 成長率 高・シェア 高 投資も回収も大きい 問題児 成長率 高・シェア 低 投資を続けるか選別 金のなる木 成長率 低・シェア 高 全社の資金源になる 負け犬 成長率 低・シェア 低 撤退・縮小を検討 資金 資金 成功 相対的市場シェア = 自社のシェア ÷ 最大競合のシェア
図 19-2 PPM の 4 象限と資金の流れ。矢印は資金の移動です。金のなる木が稼いだ資金を、花形の維持と問題児の育成に回すのが定石で、問題児がシェアを取れれば花形へ移ります。
象限市場成長率相対的市場シェア資金の出入りとるべき方針
花形高高流入も流出も大(差引きは小)投資を続けてシェアを守る
金のなる木低高流入 大・流出 小(余剰が出る)収穫し、余剰資金を他へ回す
問題児高低流出 大(資金を食う)選別して集中投資、だめなら撤退
負け犬低低どちらも小撤退・縮小
ここがひっかけ 「投資のための資金源となる事業」を問う設問で花形を選ばせるのが最頻出の誤答肢です。花形は成長市場でシェアを守るために大量の投資が必要なので、手元に資金は残りません。資金源は市場成長率が低く、相対的市場シェアが高い金のなる木です。この 1 問はほぼ同じ文面で 3 回(平成 30 年春・令和 4 年春・令和 6 年春)出ています。

計算の型: 相対的市場シェア

相対的市場シェア = 自社の市場シェア ÷ 自社を除く最大競合の市場シェア

  1. 市場全体に対する自社のシェアを求める(例: 自社 30%)
  2. 自社以外で最大のシェアを持つ 1 社を選ぶ(例: 競合 A 社 40%)
  3. 割り算する: 30 ÷ 40 = 0.75
  4. 1.0 を境に判定する。0.75 < 1.0 なのでシェアは低い側。市場成長率が高ければ問題児、低ければ負け犬

自社が首位なら値は 1 を超えます。「シェア 30% は高いのでは」と絶対値で判断すると誤ります。1 位企業と比べていくつ分かが相対的市場シェアです。

PPM は経営資源配分の最適化を目的とした手法ですが、限界もあります。判断材料が市場成長率とシェアの 2 つしかないため、事業間のシナジーや将来の技術変化を評価できません。負け犬に分類された事業が、実は花形事業の部品を供給しているといった関係は、この図には現れません。

競争戦略 ― 5 フォース・基本戦略・バリューチェーン

事業戦略の中心は「この業界で、どうやって勝つか」です。まず業界そのものの儲けやすさを測り(5 フォース分析)、次に勝ち方の型を選び(競争の基本戦略)、最後に自社の活動のどこで価値を生むかを分解します(バリューチェーン分析)。

ファイブフォース分析

ファイブフォース分析はポーターが示した業界構造の分析手法で、5 つの力が強いほど業界の収益性は低くなると考えます。令和 6 年春に 10 年ぶりに出題されており、再出題の候補です。

新規参入の脅威 売り手(供給者) の交渉力 買い手(顧客) の交渉力 代替品の脅威 (代替サービスを含む) 業界内の既存競争 (敵対関係の強さ) 5 つの力が強いほど業界の収益性は下がる
図 19-3 ファイブフォース。4 つの矢印はすべて「業界の利益を削る圧力」です。売り手の交渉力が強ければ仕入価格が上がり、買い手の交渉力が強ければ売価が下がる、と方向で考えると象限を取り違えません。
力強くなる条件収益性への影響
既存競合者同士の敵対関係同規模の企業が多い、差別化しにくい、撤退しにくい価格競争で利益が薄くなる
新規参入の脅威参入障壁(設備投資・規制・ブランド)が低い供給過剰で価格が下がる
代替製品・代替サービスの脅威別の手段で同じニーズが満たせる値上げできなくなる
買い手の交渉力買い手が少数・大口、切替コストが低い値下げ・条件改善を要求される
供給者(売り手)の支配力供給者が少数、代替材料がない仕入価格が上がる

競争の基本戦略と競争地位別戦略

ポーターは勝ち方を 3 つに整理しました。コストリーダーシップ戦略(低コストで価格勝負)、差別化戦略(機能・品質・ブランドで違いを作る)、集中戦略(特定の市場・顧客層に絞る)です。コストと差別化を同時に狙うと中途半端になる、という前提が置かれています。

一方コトラーは、シェアの順位ごとに取るべき戦略を整理しました。こちらは競争地位別戦略と呼ばれ、直近 10 年で 2 回出ています。

地位経営資源基本方針典型的な打ち手
リーダー量も質も大市場全体を拡大し、首位を守るフルライン化、同質化戦略(下位の差別化策を真似て無効化)
チャレンジャー量は大・質は劣るリーダーのシェアを奪うリーダーが真似しにくい差別化で攻める
フォロワー量も質も小上位を狙わず生き残る上位製品の模倣で開発費を抑え、低価格で存続
ニッチャー量は小・質は高い特定分野で独自の地位を築く大手が狙わない限定市場に集中
覚え方 チャレンジャーは「差別化で攻める」、フォロワーは「模倣で生き残る」、ニッチャーは「集中で独占する」、リーダーは「同質化で潰す」。動詞で覚えると、選択肢に 4 つ並んでも取り違えません。

競争のない新しい市場を切り開くブルーオーシャン戦略は、既存市場(レッドオーシャン)での消耗戦を避け、価値を高めながらコストを下げる(バリューイノベーション)ことを狙います。既存市場での差別化とは前提が違うことに注意してください。科目 B では戦略キャンバスを使った題材が令和 5 年春に出ています。

バリューチェーン分析

バリューチェーン分析は、企業の活動を価値を生む単位に分解し、どこが競争優位の源泉かを見極める手法です。直近 10 年で 3 回出ており、問われるのは主活動 5 つ・支援活動 4 つという構成と、「利益(マージン)は全活動のコストと顧客が払う価値の差である」という考え方です。

全般管理・企業インフラ 人事・労務管理 技術開発 調達活動 購買物流 調達・受入 製造 加工・組立 出荷物流 配送・在庫 販売 マーケ含む サービス 保守・支援 マージン (利益) 支援活動 主活動 主活動 5 つと支援活動 4 つ。差額がマージン
図 19-4 バリューチェーンの構成。主活動は原材料が製品になって顧客に届くまでの流れ、支援活動はそれを横断して支えるしくみです。「5 と 4」という数と、支援活動に技術開発と調達が入ることが出題ポイントです。

自社の強みが本当に競争優位につながるかを判定するのがVRIO 分析です。Value(経済的価値がある)、Rarity(希少である)、Imitability(模倣が困難である)、Organization(それを生かす組織がある)の 4 つを順に問い、すべて満たせば持続的な競争優位になります。科目 B では令和 7 年秋に VRIO とドメイン再定義の組合せで出題されました。

環境分析と成長戦略 ― PEST・3C・クロス SWOT・アンゾフ

分析フレームワークは見る範囲の広さで階層になっています。科目 B では「この分析はマクロか業界か自社か」を問う設問が繰り返し出るので、階層をそろえて覚えます。

階層手法見るもの
マクロ環境PEST 分析Politics(政治・法規制)、Economy(経済)、Society(社会・文化)、Technology(技術)
業界環境ファイブフォース分析業界内の 5 つの圧力
市場と自社3C 分析Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)
自社内部バリューチェーン・VRIO価値活動の分解、強みの持続性
統合SWOT・クロス SWOT外部(機会・脅威)と内部(強み・弱み)の突き合わせ
成長の方向成長マトリクス(アンゾフ)製品と市場の新旧の組合せ
ここがひっかけ PEST と 5 フォースはどちらも「外部環境」ですが、PEST は業界の外側(法改正・人口動態・景気)、5 フォースは業界の内側(競合・買い手・供給者)を見ます。科目 B の令和 6 年春で、この視点の差を書かせる設問が出ています。

SWOT 分析とクロス SWOT 分析

SWOT 分析は、Strength(強み)・Weakness(弱み)を内部環境、Opportunity(機会)・Threat(脅威)を外部環境として整理する手法です。ただし SWOT は分類までしかしません。分類した項目を掛け合わせて具体的な戦略を導くのがクロス SWOT 分析です。科目 B では 19 問中 8 問で SWOT が登場し、この分野で最も出る論点です。

内部: 強み(S) 内部: 弱み(W) 外部: 機会(O) 外部: 脅威(T) 積極化戦略 強みを生かして機会を 最大限に取りにいく 改善戦略 弱みを補強・提携で 機会を逃さない 差別化戦略 強みで脅威の影響を 回避・緩和する 防衛・撤退戦略 最悪の事態を避ける 縮小・撤退も選択肢 SWOT は 4 象限に分類するだけ。戦略はクロス SWOT で組み合わせて作る
図 19-5 クロス SWOT の 4 象限。科目 B では「機会と強みを組み合わせて 35 字で戦略を書く」形式が定番で、外部と内部の片方だけを書いた解答が失点原因の上位に挙がっています。
覚え方 クロス SWOT の解答は「〔機会〕を見込み、〔強み〕を生かして〜する」という 1 文の型に流し込みます。外部要因を先に置き、内部要因を後に置くと、2 要素そろった解答になります。

成長マトリクス(アンゾフ)

成長マトリクス(アンゾフの製品・市場マトリクス)は、成長の方向を製品(既存/新規)と市場(既存/新規)の 2 軸 4 象限で示します。直近 10 年で 5 回出題され、PPM に次ぐ頻出テーマです。うち 4 回は定義を選ぶ形式でしたが、令和 7 年秋には事例がどの象限かを判定させる読解型に変わりました。定義と事例の両方を押さえます。

製品 = 既存 製品 = 新規 市場 = 既存 市場 = 新規 市場浸透戦略 既存顧客の購入頻度を 上げる・値引きで拡販 新製品開発戦略 同じ顧客に新モデルを 投入する 市場開拓戦略 既存製品を海外や 別の客層へ広げる 多角化戦略 新分野へ参入する。 リスクは最も大きい 多角化は 4 象限で最もリスクが高い。シナジーが働く分野を選ぶ
図 19-6 アンゾフの成長マトリクス。市場開拓戦略は「市場開拓」「市場拡大」の両方の表記で出題されるので、どちらも同じ象限だと覚えます。左上から右下へ進むほど、未知の要素が増えてリスクが上がります。
出題実績 令和 7 年秋 問 70 は「市場浸透戦略の例」を選ぶ形式で、正解は既存製品を既存の地域住民に特別価格で販売する事例でした。事例型では、製品が新しいかと客が新しいかの 2 点だけを本文から拾えば象限が決まります。

多角化は、既存事業と関連があるかどうかでさらに分けられます。技術や販路が共通する関連型多角化はシナジーが働きやすく、まったく別の分野へ出る非関連型多角化はリスク分散の効果が大きい代わりに管理が難しくなります。科目 B では「多角化の意義を 30 字で」という形で、リスク分散と経営資源の有効活用の 2 点が問われます。

マーケティング ― STP・4P/4C・製品ライフサイクル・価格

マーケティングは「誰に、何を、いくらで、どこで、どう知らせて売るか」を決める活動です。手順としては、まず市場を分けて狙いを定め(STP)、次に打ち手を組み合わせます(マーケティングミックス)。

STP 分析とマーケティングミックス

ステップやること使う変数の例
S: セグメンテーション市場を似た性質のかたまりに分ける地理的(地域・気候)、人口統計的(年齢・所得)、心理的(価値観)、行動的(購買頻度)
T: ターゲティング分けたかたまりのどこを狙うか決める市場規模、成長性、自社の強みとの相性
P: ポジショニング狙った市場で自社をどう位置づけるか決める価格と品質など、独立した 2 軸のマップ

マーケティングミックスは、4P(売り手の視点)と4C(買い手の視点)で対になっています。この対応は直近 10 年で 3 回出題され、3 回とも「Promotion に対応する 4C は何か」→ Communication という同じ問題です。この 1 問は落とせません。

4P(売り手視点)4C(買い手視点)言い換え
Product(製品)Customer Value(顧客価値)作ったもの → 得られる価値
Price(価格)Customer Cost(顧客コスト)付けた値段 → 支払う負担
Place(流通)Convenience(利便性)売る場所 → 買いやすさ
Promotion(販売促進)Communication(コミュニケーション)売り込み → 対話
覚え方 4P と 4C は上から順に対応します。誤答肢は必ず他の 3 つの 4C(Customer Value・Customer Cost・Convenience)です。「一方通行の売り込み(Promotion)の反対は、双方向の対話(Communication)」と意味でつなげておくと、順番を忘れても選べます。

製品戦略と製品ライフサイクル

PLC(Product Life Cycle:製品ライフサイクル)は、製品の売上が導入期 → 成長期 → 成熟期 → 衰退期をたどるという考え方です。各期でとるべき施策が変わることが出題ポイントです。

売上高 時間 売上高の推移 導入期 認知を広げる 赤字・広告が先行 成長期 シェアを取る 競合が参入する 成熟期 利益が最大 ブランドで維持 衰退期 コストを削る 撤退・刈取り
図 19-7 製品ライフサイクル。売上のピークは成熟期ですが、利益のピークも成熟期です。導入期は広告費が先行して赤字になりやすく、成長期は売上が伸びても競合参入で投資が続きます。

衰退期を先延ばしする手をライフサイクルエクステンションといい、用途の提案や改良版の投入で寿命を延ばします。逆に、あえて旧型を陳腐化させて買い替えを促すのが計画的陳腐化です。差がなくなって価格でしか選ばれなくなる状態をコモディティ化、自社の新製品が自社の既存製品の売上を食う現象をカニバリゼーションと呼びます。製品の企画から廃棄までの情報を一元管理する仕組みがPLM(Product Lifecycle Management)です。

製品戦略の用語内容
製品ライン・製品ポートフォリオ関連する製品の系列と、系列全体の組合せ
製品多様化戦略品目を増やして幅広いニーズに応える
製品差別化戦略競合製品との違いを作って選ばれるようにする
市場細分化戦略市場を分けて、それぞれに合う製品を用意する
マスカスタマイゼーション量産の効率を保ちながら、個々の顧客の仕様に対応する
マーチャンダイジング品ぞろえ・価格・陳列を最適化する商品政策
プロダクトビジョン製品が目指す姿。定義し、共有し、進化させる

価格戦略

価格戦略はシラバス小分類の単位では中分類 19 で最も出題が多く、直近 10 年で 6 問あります。ターゲットリターン価格設定(2 回・同文)とプライスライニング(2 回・同文)が中心で、残りは浸透価格とフリーミアムです。名前と決め方の対応を表で固めます。

価格設定の方法決め方キーワード
ターゲットリターン価格設定目標とする投資収益率が達成できる価格を計算する目標投資収益率
コストプラス法原価に一定率の利益を上乗せする原価 + マージン
スキミングプライシング(上澄み吸収)導入期に高価格で設定し、開発費を早期回収する高く始める
ペネトレーションプライシング(浸透価格)低価格でシェアを一気に取る安く始める
プライスライニング複数の価格帯(松・竹・梅など)に分けて品ぞろえする価格帯を分ける
バリュープライシング顧客が感じる価値に見合う価格を付ける知覚価値
ダイナミックプライシング需給に応じて価格を随時変える変動する
サブスクリプションモデル期間に対して定額課金する月額・年額
フリーミアム基本機能を無料、追加機能を有料にする無料 + 課金

計算の型: ターゲットリターン価格設定

販売価格 = 単位原価 + (投資額 × 目標投資収益率)÷ 予想販売数量

例題: 投資額 2,000 万円、目標投資収益率 15%、予想販売数量 10,000 個。固定費 800 万円、1 個当たり変動費 1,200 円のとき、販売価格はいくらか。

  1. 総原価を出す: 800 万円 + 1,200 円 × 10,000 個 = 2,000 万円
  2. 単位原価を出す: 2,000 万円 ÷ 10,000 個 = 2,000 円
  3. 必要な目標利益を出す: 2,000 万円 × 15% = 300 万円
  4. 1 個当たりに割り付ける: 300 万円 ÷ 10,000 個 = 300 円
  5. 足す: 2,000 円 + 300 円 = 2,300 円

コストプラス法との違いは「上乗せの根拠」です。コストプラス法は原価に対する率、ターゲットリターンは投資額に対する収益率から逆算します。

価格を変えたときに需要がどれだけ動くかを表すのが需要の価格弾力性で、需要量の変化率を価格の変化率で割った値の絶対値です。1 より大きければ弾力的(値下げで売上が増える)、1 より小さければ非弾力的(値下げしても数量が増えず売上が減る)と判断します。生活必需品は非弾力的、ぜいたく品は弾力的になりやすい、という関係で覚えます。

流通戦略とプロモーション戦略

流通は「どの経路で顧客に届けるか」です。独立した小売店が共同で仕入れるボランタリーチェーン、本部が商標と経営ノウハウを提供して加盟店から対価を得るフランチャイズチェーン、実店舗・EC・アプリなどすべての接点を統合して在庫と顧客情報を共有するオムニチャネルが用語例です。

プロモーションは、メーカーが流通業者に働きかけて店頭で売ってもらうプッシュ戦略と、広告で消費者に直接訴えて指名購買を起こすプル戦略に分かれます。報道として取り上げてもらうパブリシティは、広告と違って費用がかからない代わりに掲載内容を統制できません。消費者の心理過程のモデルがAIDMA(Attention 注意 → Interest 関心 → Desire 欲求 → Memory 記憶 → Action 行動)です。複数の流通経路をまとめて管理することをチャネル統合といい、オムニチャネルはその考え方を全接点に広げたものです。

マーケティング手法誰に、どう働きかけるか
マスマーケティング市場全体に同じ内容を一律に届ける
ターゲットマーケティング特定のセグメントに絞って届ける
ワントゥワンマーケティング顧客 1 人ひとりに合わせて内容を変える
ダイレクトマーケティング中間業者を通さず、顧客に直接働きかける
クロスメディアマーケティング複数の媒体を組み合わせ、相互に誘導する
ロケーションベースマーケティング顧客の現在位置に応じて働きかける
コーズリレーテッドマーケティング売上の一部を社会的な活動に充てることを訴求する
市場テスト(テストマーケティング)地域や期間を限って試験販売し、本格展開を判断する
グロースハックデータ分析と改善を高速に反復して成長を加速させる

マーケティング分析と顧客管理

手法何を見るか使いどころ
RFM 分析Recency(最終購買日)・Frequency(購買頻度)・Monetary(購買金額)優良顧客の抽出、離反しかけた顧客の掘り起こし
ABC 分析売上構成比の累積を A・B・C にランク分けする重点商品の選定、在庫の絞り込み
バスケット分析同時に買われる商品の組合せ売場の配置、レコメンデーション
コンジョイント分析製品の属性の組合せへの選好から、各属性の重要度を推定する機能と価格のどちらを優先するかの判断
デルファイ法専門家へのアンケートを匿名で繰り返し、意見を収束させる技術予測、需要予測
LTV(顧客生涯価値)1 人の顧客が取引期間全体で生む利益広告費・獲得コストの上限を決める
NPS(ネットプロモータースコア)「人に薦めたいか」を 0〜10 で聞き、推奨者の比率から批判者の比率を引く顧客ロイヤルティの定点観測
市場調査(マーケティングリサーチ)質問法(アンケート)・観察法・実験法で市場の情報を集めるサンプリングで対象を抽出し、フィールド調査やエスノグラフィー調査で現場の実態を見る
クロス集計2 つ以上の属性を掛け合わせて回答を集計する年代別・地域別の傾向の違いを取り出す
価格感度測定法いくらなら高い/安いと感じるかを聞き、受容できる価格帯を求める価格設定の裏付け
アサエルの購買行動類型関与の高さとブランド間の知覚差で購買行動を 4 つに分類する販促の力点をどこに置くかの判断
バリュープロポジション顧客が求め、自社が提供でき、競合が提供できていない価値提供価値の言語化。ブランドアイデンティティとブランドプロポジションの土台
DEAR フレームワーク・アサンプションマップ事業の前提(思い込み)を洗い出し、検証の優先度を決める新規事業の仮説検証
出題実績 デルファイ法は平成 29 年春 問 69 と令和 2 年 10 月 問 68 で、いずれも「専門家への質問を繰り返して意見を収束させる予測技法」の名称を選ぶ形で出ています。誤答肢はブレーンストーミングやシナリオ法などの発想・予測技法です。「繰り返し」と「収束」があればデルファイ法です。

計算の型: LTV(顧客生涯価値)

LTV = 平均購買単価 × 年間購買回数 × 継続年数 - 顧客獲得コスト

例題: 平均購買単価 4,000 円、年 6 回購入、平均継続 3 年、1 人当たり獲得コスト 12,000 円のときの LTV。

  1. 年間売上を出す: 4,000 円 × 6 回 = 24,000 円
  2. 期間全体に伸ばす: 24,000 円 × 3 年 = 72,000 円
  3. 獲得コストを引く: 72,000 円 - 12,000 円 = 60,000 円

LTV が獲得コストを上回る限り、その広告投資は回収できます。継続年数を延ばす活動(リテンション)が LTV を最も大きく動かす点が、CRM の投資根拠になります。なお、この算式は獲得コストを直接差し引く一方式で、控除せず LTV:CAC 比として比較する流儀もあります。

顧客との関係を長期に築く考え方がCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)です。直近 10 年で 2 回、いずれも同じ定義文で出ています。1 人ひとりに合わせて対応するワントゥワンマーケティング、関係の継続を重視するリレーションシップマーケティング、全接点での体験を設計するCX(Customer Experience:顧客体験)デザイン、体験を組織的に管理するCEM(Customer Experience Management)も同じ系列の用語です。

CX デザインとサービスデザイン

顧客との全ての接点で得られる体験を設計するのが CX(顧客体験)デザイン、その体験を継続的に届けるための組織や仕組みまで設計するのがサービスデザインです。直近 10 年の出題は 2 問と少ないものの、シラバスの用語例が多い小分類なので用語表で 1 往復しておきます。

用語内容
UX(User Experience)製品・サービスの利用体験。UX タイムスパンとして予期的・一時的・エピソード的・累積的の 4 段階で捉える
顧客価値ヒエラルキー基本的な価値から期待・願望・予想外の価値まで、顧客が感じる価値の段階
顧客ロイヤルティ継続して自社を選び続ける度合い。コンバージョン率(CVR)とリテンション率で測る
ペルソナ典型的な利用者像を、1 人の具体的な人物として描いたもの
カスタマージャーニーマップ認知から購入・利用後までの体験を時系列で可視化した図
サービスブループリント顧客の行動と、それを支える裏側の業務・システムを対応付けた設計図
サービスデザインの 6 原則人間中心・共働的であること・反復的であること・連続的であること・リアルであること・ホリスティック(全体的)な視点
参加型デザイン利用者自身を設計の過程に参加させる進め方

デジタルマーケティング

手法内容
SEO(検索エンジン最適化)検索結果で上位に表示されるようサイトを改善する
リスティング広告検索キーワードに連動して表示される広告
アフィリエイト成果(購入・申込)に応じて紹介者に報酬を払う成功報酬型広告
ジオターゲティング広告利用者の位置情報に連動して配信する広告
LPO(ランディングページ最適化)最初に着地するページを改善して離脱を防ぐ
A/B テスト2 案を同時に出して成果の高い方を選ぶ
パーミッションマーケティングあらかじめ同意を得た相手にだけ情報を送る(オプトインメール広告)
バイラルマーケティング口コミが人から人へ広がる仕組みを作る
インバウンドマーケティング有益な情報を発信して見込み客に見つけてもらう
MA(マーケティングオートメーション)見込み客の行動に応じた施策を自動実行する
バナー広告Web ページ上の画像枠に掲載する広告
デジタルサイネージ店頭や駅の電子表示機に映像・静止画で情報を出す
レコメンデーション購買履歴や閲覧履歴から関連商品を推薦する

効果測定の指標としては、訪問者のうち成約に至った割合のCVR(Conversion Rate:顧客転換率)、既存顧客が継続した割合のリテンション率、広告費に対する売上の比率であるROAS(Return On Advertising Spend)が用語例に入っています。ROAS は「広告経由の売上 ÷ 広告費」なので、値が大きいほど広告が効率よく売上を生んでいることになります。

新製品が市場に浸透する順序を示したのがイノベータ理論です。イノベータ(革新者、約 2.5%)、アーリーアダプタ(初期採用者、約 13.5%)、アーリーマジョリティ(前期追随者、約 34%)、レイトマジョリティ(後期追随者、約 34%)、ラガード(遅滞者、約 16%)の 5 分類で、アーリーアダプタとアーリーマジョリティの間にある大きな溝をキャズムと呼びます。ここを越えられるかどうかが普及の分かれ目になります。また、販売機会の少ない多数の商品の売上合計が、売れ筋商品の売上に匹敵するほど大きくなる現象をロングテールといい、在庫コストの低い EC で顕著になります。

ビジネス戦略の目標設定と評価 ― CSF・KPI・BSC

戦略を立てただけでは実行されません。シラバスは目標設定の手順を「企業理念・ビジョン・全社戦略を踏まえて環境分析と戦略立案を行い、戦略目標を定める → 目標達成のために重点的に取り組むべき CSF を明確にする → 達成度を計る指標を設定して評価する」と示しています。この 3 段の順序がそのまま出題されます。

用語正式名称・意味例
MVVミッション(使命)・ビジョン(目指す姿)・バリュー(価値観)「地域の食を支える」
CSFCritical Success Factor:重要成功要因。目標達成のために何をやり切るか「配送の当日化」
KGIKey Goal Indicator:重要目標達成指標。最終成果を測る「年間売上 50 億円」
KPIKey Performance Indicator:重要業績評価指標。CSF の進捗を測る「当日配送率 90%」
OKRObjectives and Key Results:定性的な目標と、その達成を測る数値結果の組目標 1 つに結果 3 つ
モニタリング指標を継続的に観測して差異を把握する月次レビュー
フィージビリティスタディ新規事業の採算性・実現性を投資前に調査・評価する実行可能性調査
ビジネスモデルキャンバス顧客・提供価値・収益の流れなど 9 要素で事業構造を 1 枚に描く新規事業の設計
ここがひっかけ フィージビリティスタディは「投資前」の調査です。誤答肢は「導入後の効果測定」「稼働後の監査」といった事後の活動になっています。同じ型のひっかけがデューデリジェンス(買収の判断前に行う調査)にも使われます。時期を問う設問だと気づけば即答できます。令和 5 年春 問 69 以降、令和 6 年春 問 69・令和 7 年秋 問 69 でほぼ同文が再出題された新定番です。

KGI と KPI の違いは「ゴールか、途中の物差しか」です。売上高は KGI、そのために毎日追う訪問件数や当日配送率は KPI です。CSF は指標ではなく取り組みの対象である点も混同されやすいので、「CSF はやること、KPI はその物差し」と対で覚えます。

バランススコアカードと戦略マップ

BSC(Balanced Scorecard:バランススコアカード)は、業績を財務だけで測ることの偏りを正すため、財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の 4 視点で目標と指標を設定する手法です。BSC 本体で 3 回、戦略マップで 2 回、合計 5 回出題されており、PPM とアンゾフに次ぐ頻出テーマです。

4 つの視点 評価指標(KPI)の例 学習と成長の視点 資格取得者数・研修時間・定着率 業務プロセスの視点 納期遵守率・不良率・リードタイム 顧客の視点 顧客満足度・リピート率・シェア 財務の視点 売上高成長率・ROE・コスト削減額 下の視点への投資が上の成果を生む因果を描いたものが戦略マップ
図 19-8 BSC の 4 視点と因果の向き。人材育成(学習と成長)が業務改善につながり、それが顧客の評価を上げ、最後に財務数値に現れます。戦略マップはこの因果関係を図にしたもので、「4 視点を基に課題・施策・目標の因果関係を表現した図」という説明で出題されます。
出題実績 「BSC の 4 つの視点のうち、財務・業務プロセス・学習と成長 に加わる残る 1 つは何か」→ 顧客。平成 31 年春 問 68 と令和 3 年春 問 70 で同文の再出題です。誤答肢は「株主の視点」「競合の視点」「社会の視点」といった、それらしいが 4 視点に含まれない名称です。4 視点の名前をそのまま暗記すれば確実に取れます。

BSC の各視点には、戦略目標 → CSF → 評価指標(KPI)→ 目標値 → 実施項目 の順に落とし込みます。実績と目標値の差を分析するのが差異分析です。科目 B では「学習と成長の視点の KPI を答える」形式が繰り返し出ており、平成 28 年秋 問 62 では学習と成長の視点の KPI 目標例として人材育成に関するものが正解になりました。4 視点のうち下の 2 つ(業務プロセス・学習と成長)は社内の話、上の 2 つ(顧客・財務)は社外に現れる結果と切り分けると迷いません。

その他の評価・分析手法

手法目的要点
バリューエンジニアリング(VE)機能とコストの比で価値を高める価値 = 機能 ÷ コスト。機能定義 → 機能評価 → 代替案作成の順
シックスシグマばらつきを減らして品質を安定させる統計的手法で不良の発生率を抑える
TQM(総合的品質管理)全部門・全員参加で品質を作り込む検査で不良を除くのではなく工程で作り込む
ニーズ・ウォンツ分析必要性(ニーズ)と欲求(ウォンツ)を切り分ける「移動したい」がニーズ、「あの車が欲しい」がウォンツ
競合分析・HHI業界の集中度を測るハーフィンダール・ハーシュマン指数。各社シェアの 2 乗の和。値が大きいほど寡占
ベンチマーキング優れた他社の水準と比べて改善目標を作る比較対象は同業に限らない
連関図法複雑に絡んだ原因と結果の関係を矢線で図示する新 QC 七つ道具の 1 つ

経営管理システム ― ERP・SCM・CRM・SFA・KMS

経営管理システムは、略語の 3 文字だけを見て「何を管理するシステムか」を即答できるかが勝負です。直近 10 年ではこの小分類から 4 問(CRM が 2 回、SCM・SECI が各 1 回)出ています。CRM の定義文が誤答肢として他の略語の説明と並ぶので、まとめて 1 表で覚えるのが最短です。

略語正式名称管理する対象ひとことで
ERPEnterprise Resource Planning(企業資源計画)会計・人事・生産・販売など全社の資源社内の情報を 1 つのデータベースに統合する
SCMSupply Chain Management調達 → 生産 → 物流 → 販売の連鎖企業をまたいで需給情報を共有し、在庫と納期を最適化する
CRMCustomer Relationship Management(顧客関係管理)顧客との接点と履歴全チャネルで顧客情報を共有し、顧客ロイヤルティを最大化する
SFASales Force Automation営業担当者の活動と商談案件の進捗と行動を可視化して営業を支援する
KMS / KMKnowledge Management System個人が持つ知識・ノウハウ暗黙知を組織で共有できる形にする
PLMProduct Lifecycle Management製品の企画から廃棄までの情報設計変更や部品情報を全工程で一貫管理する
BIBusiness Intelligence蓄積された業務データ集計・分析して意思決定に使える形で見せる
ECREfficient Consumer Response(効率的消費者対応)流通業と製造業の連携消費者の購買情報を共有して欠品と過剰在庫を減らす
TOCTheory of Constraints(制約条件理論)工程全体のボトルネック最も遅い工程を改善しないと全体は速くならない
EIPEnterprise Information Portal(企業内情報ポータル)社内の情報への入口必要な社内情報を 1 つの画面に集める
バリューチェーンマネジメント―価値活動の連鎖全体調達から販売までを一連の価値の流れとして管理する
ここがひっかけ CRM を問う設問の誤答肢は、SCM(企業間の供給連鎖)・ERP(社内資源の統合)・SFA(営業活動の支援)・KMS(知識の共有)の説明そのままです。判別は主語が誰かで行います。顧客が主語なら CRM、取引先と自社をまたぐモノの流れなら SCM、社内の勘定・人・在庫なら ERP、営業担当者なら SFA です。

ナレッジマネジメントの理論的な支柱がSECI モデルです。暗黙知と形式知が 4 段階で循環するという考え方で、共同化(Socialization:体験を共有して暗黙知を伝える)→ 表出化(Externalization:暗黙知を言葉や図にする)→ 連結化(Combination:形式知を組み合わせて体系化する)→ 内面化(Internalization:形式知を実践して自分の暗黙知にする)の順に回ります。科目 B の令和 5 年秋では、この 4 段階を並べ替える設問が出ています。頭文字の S・E・C・I の順で覚えるのが確実です。

技術戦略マネジメント ― MOT・イノベーション・ロードマップ

中分類 20(技術戦略マネジメント)は出題数が少なく、直近 10 年 19 回で 27 問、1 回平均 1.4 問です。19 回中 4 回は 1 問も出ませんでした。ただし出るときは 2 問出ますし、テーマが「技術の S カーブ」と「魔の川・死の谷・ダーウィンの海」に集中しているので、この 2 つの図を押さえるだけで期待値が高い分野です。

技術を経営の成果に結び付ける経営手法をMOT(Management of Technology:技術経営)といいます。技術開発戦略は経営戦略・事業戦略と連携していなければならず、「良い技術を作れば売れる」という考えを否定するのが出発点です。

イノベーションの類型

類型内容例
プロダクトイノベーション新しい製品・サービスを生み出すこれまでにない機能の商品
プロセスイノベーション製造・業務のやり方を革新する生産方式の刷新による大幅な原価低減
ラディカルイノベーション非連続で急激な変化をもたらす産業構造ごと変える技術
持続的イノベーション既存の性能軸を順当に改良する既存顧客が求める高性能化
破壊的イノベーション当初は性能が低いが、別の価値軸で既存製品を置き換える安価・単純で新しい市場を作る製品
オープンイノベーション自社と外部の技術やアイディアを組み合わせ、生まれた価値を外部へも提供する他社・大学との共同開発、技術のライセンス供与
API エコノミー他社が公開した API を組み込んで新しいサービスを作る経済圏他社の地図・決済 API を使ったアプリ
ここがひっかけ オープンイノベーションを片方向にした肢が定番の誤答です。「外部の優れた技術を取り込む」だけでは足りず、自社の技術やアイディアを外部にも出す双方向性が定義に含まれます(令和 5 年秋 問 70)。クローズドイノベーション(自社で完結)や M&A(企業ごと取得)と混同させる肢も並びます。

優良企業が既存顧客の声に応えて持続的イノベーションを続けるうちに、破壊的イノベーションに対応できず地位を失う現象をイノベーションのジレンマといいます。「合理的な経営判断をした結果として負ける」という点が本質で、経営の失敗が原因ではありません。

技術開発の進め方に関わる用語も押さえます。仮説 → 最小限の製品(MVP:Minimum Viable Product)→ 検証 → 学習 のサイクルを高速に回すリーンスタートアップ、利用者の観察から課題を発見して発想するデザイン思考、将来のあるべき姿から逆算して今やることを決めるバックキャスティング、実現可能性を試作で確かめるPoC(Proof of Concept:概念実証)と、価値を確かめる PoV(Proof of Value)、事業性を確かめる PoB(Proof of Business)です。短期間で集中的にアイディアを出す催しがアイディアソン、ものを作るところまで行うのがハッカソン、個人が製造技術を使って物を作る流れがメイカームーブメントです。市場(Market)・機能(Function)・技術(Technology)を対応付けて技術の使い道を探すのがMFT フレームワークで、品質・価格・納期・環境の 4 要素がQCDEです。

技術開発戦略の立案に関わる用語内容
技術研究・委託研究・共同研究自社で行う/外部に委託する/外部と対等の立場で一緒に行う
技術マーケティング自社の技術を生かせる市場や用途を外に探しに行く活動
発想法・システム思考アイディアの出し方の技法/要素の相互作用として全体を捉える考え方
市場創生・市場価値これまでなかった市場を作り出すこと/市場が認める価値の大きさ
R&D(Research and Development)研究開発。技術開発投資の対象そのもの
製品動向・技術動向・標準化動向立案の前に押さえる 3 つの外部動向
知的財産権管理出願・維持・活用を計画的に管理し、技術を権利として守る
市場ニーズ技術開発計画とロードマップの起点になる需要。技術起点だけで計画を作らない

技術の S カーブ

技術の S カーブは、技術の性能が「当初は緩やか → やがて急激に進歩 → 成熟期に停滞」という S 字を描くという考え方です。直近 10 年で 2 回出題され、平成 28 年春は名称を、令和 3 年春は説明を問う形式でした。名称と説明の双方向で出題される、と考えて両方言えるようにします。

技術の性能 時間 第 1 世代の技術 性能は停滞する 第 2 世代の技術 新技術の登場 乗換え点
図 19-9 技術の S カーブ。破線が次世代技術です。第 1 世代が停滞に入ったころ、性能では劣る次世代技術が急激に伸びて追い越します。既存技術の改良に投資を続けると乗換えに遅れる、という構図がイノベーションのジレンマと同じ形です。
カーブ系の用語横軸と縦軸形の特徴
技術の S カーブ時間(累積投資)× 技術の性能緩やか → 急激 → 停滞の S 字
プロダクトライフサイクル時間 × 製品の売上高導入・成長・成熟・衰退で最後に下がる
ハイプサイクル時間 × 技術への期待度過度な期待のピークの後にいったん落ち込む
キャズム普及率の推移初期採用者と前期追随者の間の溝
経験曲線累積生産量 × 単位コスト右下がり(コストが下がる)

価値創出の三要素と 3 つの障壁

技術を経済的な価値に変えるには、技術・製品の価値を作る価値創造(Value Creation)、それを顧客に届ける価値実現(Value Delivery)、そこから利益を得る価値利益化(Value Capture)の 3 つが必要です。この道のりには段階ごとに壁があり、それぞれ名前が付いています。順序が入れ替わった肢が定番の誤答なので、図で順番ごと覚えます。

研究 シーズ探索 魔の川 技術 → 製品 開発 試作・製品化 死の谷 製品 → 事業 事業化 市場へ投入 ダーウィンの海 事業 → 産業 産業化 収益の柱へ 順序は 魔の川 → 死の谷 → ダーウィンの海
図 19-10 研究から産業化までの 4 段階と 3 つの障壁。太い縦棒が壁です。魔の川は研究成果が製品の形にならない壁、死の谷は製品ができても事業として立ち上がらない壁、ダーウィンの海は事業化した後に競合との競争を生き残る壁です。
出題実績 死の谷は平成 28 年秋 問 70 で「製品開発に成功しても事業化には更なる困難がある」という説明として、ダーウィンの海は令和 6 年秋 問 70 で「事業化から産業化への移行時に競合と競う障壁」の名称として出ています。3 つのうち 2 つが既出なので、残る魔の川が次の出題候補です。

外部資源の活用と技術開発計画

技術は自社で全部作る必要はありません。技術獲得(買う)・技術供与(貸す)・技術提携(組む)・M&A(企業ごと取る)が基本の手段です。特に出題実績があるのが産学官連携と TLO です。

用語内容試験のポイント
産学官連携企業・大学・公的機関が共同で研究開発を行う経費を企業が全額負担しても、研究は対等の立場で行う(令和 5 年春 問 70)
TLOTechnology Licensing Organization:技術移転機関方向は大学 → 企業。大学の研究成果を特許化し企業へ移転する(令和 1 年秋 問 70)
標準化戦略自社技術を業界標準・国際標準にするWTO 政府調達協定の加盟国では国際標準の仕様で調達される
パテントプール複数社の特許を 1 か所に集め、まとめて利用許諾する「集めて貸す」
クロスライセンス互いの特許を相互に使えるようにする「交換する」
防衛特許自社が使う予定はないが、他社に権利を取られて事業を妨げられるのを防ぐために取る特許「使わずに押さえる」
早期審査制度条件を満たす出願の特許審査を早めてもらう期間の短縮

技術開発計画には、技術開発投資計画(いくら投じるか)、技術開発拠点計画(どこで開発するか)、人材計画(誰が担うか)が含まれ、経営資源の最適配分と投資対効果で評価します。設計と生産準備などの工程を並行して進めて開発期間を短縮する手法がコンカレントエンジニアリングで、量産前に小規模で作って問題を洗い出すのがパイロット生産です。

技術開発の道筋を時系列で描いた図がロードマップです。科学的な裏付けと関係者の合意が取れた未来像を年表の形にする点が特徴で、技術ロードマップ(要素技術がいつ使えるようになるか)・製品応用ロードマップ(その技術をどの製品に載せるか)・特許取得ロードマップ(いつどの権利を押さえるか)を並べて整合させます。技術を重要度と自社の優位性などの 2 軸で並べて投資先を選ぶのが技術ポートフォリオで、PPM と同じ 2 軸マトリクスの考え方を技術に当てはめたものです。中核となる技術をコア技術と呼び、これを軸に応用先を広げるのが技術戦略の基本形になります。

戦略マップとロードマップの違い どちらも「関係を描いた図」ですが、戦略マップは 4 視点の因果関係、ロードマップは時系列の道筋です。令和 5 年春 問 68 と令和 7 年秋 問 68 では戦略マップの説明を選ぶ設問が出ていますが、誤答肢に並んだのはロードマップではなく、ポジショニングマップ(二つの要素を X 軸・Y 軸に取る図)・ビジネススクリーン(市場の魅力度×自社の優位性の四象限)・ビジネスモデル(顧客層×経営資源×提供する製品・サービス)でした。いずれも「二つの軸で分類する図」との取り違えを誘う構成です。「因果」ならマップ、「時間軸」ならロードマップと切り分けます。

ひっかけポイント

ここがひっかけ 1: 象限の高低を入れ替える PPM は「市場成長率が低く、相対的市場シェアが高い」が金のなる木です。誤答肢はこの 2 つの高低を入れ替えるか、資金源として花形を挙げてきます。アンゾフも同じ型で、「既存市場に新製品」(新製品開発)と「新市場に既存製品」(市場開拓)を入れ替えた肢が並びます。本文から「製品は新しいか」「客は新しいか」の 2 点だけを拾うと象限が確定します。
ここがひっかけ 2: フレームワーク名を取り違えさせる 1 つの設問の 4 択に、PPM・SWOT・アンゾフ・ファイブフォース・バリューチェーンの説明を並べる出題が多いです。数と軸で切ります。PPM は「2 軸 4 象限で事業に資金を配る」、アンゾフは「製品と市場の 2 軸 4 象限で成長の方向」、SWOT は「内部と外部の 4 分類」、ファイブフォースは「5 つの圧力で業界の収益性」、バリューチェーンは「主活動 5 と支援活動 4」です。数字が入っている説明を先に消していくと絞れます。
ここがひっかけ 3: 4P と 4C の対応をずらす Promotion に対応する 4C は Communication です。誤答肢は必ず Customer Value・Customer Cost・Convenience の 3 つです。この問題は直近 10 年で 3 回(平成 28 年春・令和 1 年秋・令和 7 年秋)、いずれもほぼ同文で出ています。Product / Price / Place / Promotion の順に Customer Value / Customer Cost / Convenience / Communication と、順序ごと覚えてしまうのが最も速いです。
ここがひっかけ 4: 時期をずらす フィージビリティスタディは投資前の実現性・採算性の調査で、稼働後の効果測定ではありません。デューデリジェンスも買収の判断前の調査で、買収後の統合作業(PMI)ではありません。PoC も本格開発前の検証です。「いつやるのか」を軸に読むと、事後評価にすり替えた肢を落とせます。
ここがひっかけ 5: 段階と役割を入れ替える 3 つの障壁は魔の川(研究 → 開発)→ 死の谷(開発 → 事業化)→ ダーウィンの海(事業化 → 産業化)の順です。段階をずらした肢と、キャズム(普及の溝)を混ぜた肢が並びます。経営管理システムも同じ型で、CRM(顧客)・SCM(企業間のモノの流れ)・ERP(社内資源の統合)・SFA(営業活動)の説明が入れ替えられます。主語が誰かで判別してください。競争地位別戦略も同型で、差別化はチャレンジャー、模倣で低コストはフォロワー、特定市場への集中はニッチャー、同質化はリーダーです。攻める側が差別化、守る側が同質化と方向で覚えます。

理解度チェック(科目 A 形式)

Q1. PPM において、他の事業への投資の原資となる資金を生み出す事業はどの位置づけか。
  1. 市場成長率が高く、相対的市場シェアも高い事業
  2. 市場成長率が高く、相対的市場シェアが低い事業
  3. 市場成長率が低く、相対的市場シェアが高い事業
  4. 市場成長率が低く、相対的市場シェアも低い事業

正解: ウ 金のなる木です。市場が成熟しているので追加投資が少なくて済み、シェアが高いので売上が大きく、差引きの資金が余ります。ア は花形で、シェアを守るための投資が大きく資金は残りません。イ は問題児で資金を消費する側です。エ は負け犬で、資金の出入りがどちらも小さく撤退の検討対象です。

Q2. 弁当の製造販売を行う企業の施策のうち、アンゾフの成長マトリクスにおける市場浸透戦略に当たるものはどれか。
  1. 現在の常連客向けに既存の弁当の回数券を割引価格で発行し、来店頻度を高める
  2. 弁当の製法を生かした冷凍食品を新たに開発し、既存の店舗で販売する
  3. 現在販売している弁当を、これまで出店していない隣県のオフィス街で販売する
  4. 弁当事業とは無関係の介護施設の運営に新規参入する

正解: ア 既存の製品を既存の市場に、より多く売る施策なので市場浸透戦略です。イ は既存市場に新製品を出すので新製品開発戦略、ウ は既存製品を新しい市場に出すので市場開拓戦略、エ は製品も市場も新規なので多角化戦略です。製品が新しいか、客が新しいかの 2 点だけを見れば象限が決まります。

Q3. クロス SWOT 分析の説明として適切なものはどれか。
  1. 外部環境を政治・経済・社会・技術の 4 つの観点で整理する
  2. 企業の活動を主活動と支援活動に分解し、競争優位の源泉を特定する
  3. 事業を市場成長率と相対的市場シェアの 2 軸に配置し、資源配分を決める
  4. 内部環境の強み・弱みと外部環境の機会・脅威を組み合わせ、とるべき戦略を導く

正解: エ SWOT 分析は 4 つに分類するところまでで、分類した項目を掛け合わせて具体的な戦略を導くのがクロス SWOT 分析です。ア は PEST 分析、イ はバリューチェーン分析、ウ は PPM の説明です。

Q4. ファイブフォース分析において、買い手の交渉力が強くなる要因はどれか。
  1. 買い手の数が多く、1 社当たりの購入量が小さい
  2. 買い手が他社の製品へ容易に切り替えられる
  3. 業界の製品が高度に差別化されている
  4. 原材料の供給者が少数に集中している

正解: イ 切替コストが低いほど買い手は「他社に替える」と言えるので、値下げや条件改善を要求しやすくなります。ア は逆で、買い手が分散していると 1 社の影響力は小さくなります。ウ も逆で、差別化されていれば買い手は替えにくく交渉力は弱まります。エ は供給者(売り手)の支配力に関する要因で、買い手の交渉力とは別の力です。

Q5. バリューチェーン分析の説明として適切なものはどれか。
  1. 企業間で受発注や在庫の情報を共有し、供給の連鎖全体を最適化する
  2. 業務プロセスを白紙から再設計し、抜本的に効率を高める
  3. 企業の活動を 5 つの主活動と 4 つの支援活動に分け、どこで付加価値が生まれるかを分析する
  4. 事業を製品と市場の新旧で 4 つに分け、成長の方向を選ぶ

正解: ウ 主活動は購買物流・製造・出荷物流・販売・サービスの 5 つ、支援活動は全般管理・人事労務管理・技術開発・調達活動の 4 つです。ア は SCM、イ は BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)、エ はアンゾフの成長マトリクスの説明です。「5 と 4」という数が判別の決め手になります。

Q6. マーケティングの 4P のうち Promotion に対応する、4C の構成要素はどれか。
  1. Communication
  2. Convenience
  3. Customer Cost
  4. Customer Value

正解: ア 4P は売り手視点、4C は買い手視点で、上から順に Product ↔ Customer Value、Price ↔ Customer Cost、Place ↔ Convenience、Promotion ↔ Communication が対応します。一方的な売り込み(Promotion)を買い手側から見ると双方向の対話(Communication)になる、と意味でつなぐと迷いません。イ は Place、ウ は Price、エ は Product に対応します。

Q7. 複数の専門家に同じテーマの質問を匿名で行い、集約した回答を示した上で質問を繰り返して意見を収束させる予測技法はどれか。
  1. ABC 分析
  2. デルファイ法
  3. コンジョイント分析
  4. ブレーンストーミング

正解: イ 「専門家」「繰り返し」「収束」の 3 語がそろえばデルファイ法です。ア は売上構成比で商品をランク分けする分析、ウ は製品の属性の組合せへの選好から各属性の重要度を推定する分析、エ は批判を禁じて自由に発想を出す集団発想法で、いずれも意見を収束させる予測技法ではありません。

Q8. ターゲットリターン価格設定を用いる。投資額 1,500 万円、目標投資収益率 20%、予想販売数量 6,000 個、固定費 600 万円、1 個当たり変動費 900 円のとき、販売価格は何円か。
  1. 1,900
  2. 2,400
  3. 2,900
  4. 4,400

正解: イ 総原価は 600 万円 + 900 円 × 6,000 個 = 1,140 万円、単位原価は 1,140 万円 ÷ 6,000 個 = 1,900 円です。目標利益は 1,500 万円 × 20% = 300 万円で、1 個当たり 500 円になります。合計して 2,400 円です。ア は目標利益の上乗せを忘れた値、ウ は固定費を単位原価に二重計上した値、エ は目標投資収益率ではなく投資額そのものを 1 個当たりに割り付けた値です。

Q9. バランススコアカードの 4 つの視点のうち、財務の視点、業務プロセスの視点、学習と成長の視点に加わる残りの 1 つはどれか。
  1. 株主の視点
  2. 供給者の視点
  3. 社会貢献の視点
  4. 顧客の視点

正解: エ 4 視点は財務・顧客・業務プロセス・学習と成長です。ア は財務の視点に含めて考えるものであり、独立した視点ではありません。イ と ウ はいずれも 4 視点に含まれない、それらしく作られた誤答肢です。4 つの名称をそのまま暗記すれば確実に取れます。

Q10. 戦略マップの説明として適切なものはどれか。
  1. 技術や製品が実現する時期を時系列に並べて示した図
  2. 業務の手順と担当者の役割を、処理の流れに沿って示した図
  3. バランススコアカードの 4 つの視点ごとに戦略目標を置き、それらの因果関係を矢印で結んで表現した図
  4. 複数の要因が絡み合う原因と結果の関係を、矢線で結んで整理した図

正解: ウ 戦略マップは BSC の 4 視点を土台に、課題・施策・目標の因果関係を可視化した図です。ア はロードマップ、イ は業務フロー図、エ は新 QC 七つ道具の連関図です。エ も因果を扱いますが、4 視点という枠があるかどうかで戦略マップと区別します。

Q11. フィージビリティスタディの説明として適切なものはどれか。
  1. システムの稼働後に、投資額に見合う効果が得られたかを測定する
  2. 開発したソフトウェアが要求どおりに動作するかをテストで確認する
  3. 買収の完了後に、両社の組織や業務システムを統合する
  4. 新規事業について、投資の実行前に技術的な実現性と採算性を調査・評価する

正解: エ フィージビリティスタディは実行可能性調査とも呼ばれ、資源を投じる前に「そもそもできるのか、儲かるのか」を確かめます。ア は投資効果測定、イ はソフトウェアテスト、ウ は買収後の統合作業で、いずれも事後の活動です。時期のずらしが典型的な誤答の作り方です。

Q12. CRM の説明として適切なものはどれか。
  1. 調達から販売までの企業間の情報を共有し、在庫と納期を最適化する
  2. 全ての顧客チャネルで顧客情報を共有し、長期的な関係を築いて顧客ロイヤルティを最大化する
  3. 会計・人事・生産などの基幹業務のデータを 1 つに統合して管理する
  4. 営業担当者の商談の進捗や活動履歴を記録し、営業活動を支援する

正解: イ CRM は顧客との関係そのものを管理対象にします。ア は SCM、ウ は ERP、エ は SFA の説明です。主語が顧客なら CRM、企業間のモノの流れなら SCM、社内の基幹業務なら ERP、営業担当者なら SFA と切り分けます。

Q13. 事業化には成功したものの、その後に多数の競合と競い合い、産業として定着するまでに直面する障壁を何と呼ぶか。
  1. キャズム
  2. 死の谷
  3. ダーウィンの海
  4. 魔の川

正解: ウ 研究 → 開発 → 事業化 → 産業化 の 4 段階のうち、最後の「事業化から産業化へ」の壁がダーウィンの海です。エ は研究から開発へ進めない壁、イ は開発に成功しても事業化できない壁です。ア のキャズムはイノベータ理論で、初期採用者と前期追随者の間にある普及の溝を指し、技術開発の段階の壁ではありません。

Q14. 技術の S カーブの説明として適切なものはどれか。
  1. 技術の性能は、当初は緩やかにしか向上せず、やがて急速に進歩し、成熟すると停滞する
  2. 新技術への期待が過度に高まった後にいったん落ち込み、その後に安定した水準へ落ち着く
  3. 製品の売上高は導入・成長・成熟の各期を経て、衰退期に減少する
  4. 累積生産量が増えるほど、製品 1 個当たりのコストが下がる

正解: ア 縦軸が技術の性能、横軸が時間(または累積投資)で、S 字を描いて最後に停滞します。イ はハイプサイクル、ウ は製品ライフサイクル、エ は経験曲線効果の説明です。カーブ系の用語は縦軸が何か(性能・期待度・売上・コスト)で見分けます。

まとめ

この章の要点は「軸の名前」と「数」と「順序」に集約されます。試験直前はこの表だけを見返してください。

フレームワーク軸・構成要素覚える中身
PPM市場成長率 × 相対的市場シェア資金源は成長率 低 × シェア 高の金のなる木
成長マトリクス(アンゾフ)製品(既存/新規)× 市場(既存/新規)市場浸透・新製品開発・市場開拓・多角化。多角化が最もリスク大
SWOT / クロス SWOT内部(強み・弱み)× 外部(機会・脅威)SWOT は分類まで、戦略はクロス SWOT で導く
ファイブフォース5 つの力既存競合・新規参入・代替品・買い手・供給者。強いほど収益性は低い
バリューチェーン主活動 5 + 支援活動 4差額がマージン。支援活動に技術開発と調達が入る
競争の基本戦略3 つコストリーダーシップ・差別化・集中
競争地位別戦略4 類型リーダー=同質化、チャレンジャー=差別化、フォロワー=模倣、ニッチャー=集中
4P / 4C4 対 4Promotion ↔ Communication
製品ライフサイクル4 期導入(赤字・認知)・成長(シェア)・成熟(利益最大)・衰退(撤退)
BSC4 視点財務・顧客・業務プロセス・学習と成長。因果を描くと戦略マップ
目標指標CSF / KGI / KPICSF はやること、KGI は最終成果、KPI は進捗の物差し
技術の S カーブ時間 × 技術の性能緩やか → 急激 → 停滞。次世代カーブに追い越される
3 つの障壁4 段階の間魔の川(研究→開発)→ 死の谷(開発→事業化)→ ダーウィンの海(事業化→産業化)
経営管理システム主語で判別顧客=CRM、企業間の流れ=SCM、社内資源=ERP、営業=SFA、知識=KMS

次の第 20 章では、ここで学んだ経営戦略が実際の業務システムとしてどう形になるか(業種別システム・生産管理・e-ビジネス・IoT/AI 応用)を扱います。本章の CRM・SCM・ERP は、第 20 章の業務システムと第 18 章の情報システム戦略の両方につながる結び目です。